怖いけど、なぜか引き込まれる。血の海、白目をむく少女、惨死…。次々に繰り出される恐怖シーンに胸がざわついた。ただ、単なるホラー映画ではない。

沢村伊智氏の日本ホラー小説大賞受賞作「ぼぎわんが、来る」の映画化。メガホンは「告白」の中島哲也監督が取った。主演の岡田准一が、ある若夫婦の家族に起こる不可思議な現象の謎に迫る。

ド派手な柄シャツ姿のぶっきらぼうな主人公は見た目とは違い、「あれ」に狙われる闇を持っている。終盤、岡田が血まみれになりながら「あれ」と闘うシーンはまさに全身全霊という言葉がぴったり。苦悩と絶望の表情に息をのんだ。

岡田だけではなく、登場人物のキャラクターが二転三転するのも怖い。妻夫木聡が演じる「イクメンパパ」は愛娘との日々の生活をSNSで発信するが、育児に協力的な自分に酔っている身勝手キャラ。「あれ」の格好のターゲットだ。

日本最強の霊媒師の松たか子、育児ノイローゼ気味の主婦黒木華、“キャバ嬢霊媒師”の小松菜奈らの好演も光る。人が「恐怖」を感じるものはなにか。人間の裏側を知る恐怖をたっぷり味わえる。【松浦隆司】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)