映画この一本

夫婦の感情、10年間の変化を丁寧に描く/ロマンスドール(日)

冒頭に結末を見せてしまう大胆な手法だが、そこからが奥深い。ずっと一緒にいたいと結婚したはずなのに、時間とともに息苦しさを感じ、夫婦の感情が変化していくさまを丁寧に描いたラブストーリー。物語は2人が出会った10年前にさかのぼる。

高橋一生が演じる主人公の哲雄は、美大の彫刻科を出たラブドール職人。かつて「ダッチワイフ」と呼ばれたビニール製の女体人形は、いまでは人肌と変わらない感触のシリコーン製の「ラブドール」と名を変え、精巧な工芸品とまで言われる。哲雄はもっとリアルな乳房をつくりたくて、医療用と偽ってモデルになってもらった蒼井優が演じる園子にひと目ぼれ。ラブドール職人であることを隠したまま結婚する。

仕事にのめり込んでいくうちに、すれ違いが生じ、セックスレスになり、危機が訪れる。うそをつく夫と、秘密を抱えた妻。高橋が感情の揺れを深みのある演技で繊細に表現。蒼井の自然体の演技も光る。タナダユキ氏の同名小説を、同氏自らが脚本・監督を務めて映画化した。「虚」と「実」。ラブドールに魂が入り、「本物」になってゆく過程に胸が締めつけられた。

【松浦隆司】

(このコラムの更新は毎週日曜日です)

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