ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で日本がアイルランドから大金星を挙げました。日本の快進撃とともに人気が大金星の「ゆるキャラ」がいます。花園ラグビー場がある東大阪市のゆるキャラ「トライくん」です。W杯関連のイベントなどの出演オファーが急増。「分身の術」を使って、別々のイベント会場に駆けつけることも。すっかり人気者になったトライくんですが、不遇の時代もありました。

大阪市天王寺区の大阪天王寺公園エントランスエリア「てんしば」で行われた日本-アイルランド戦のパブリックビューイング(PV)。試合開始前、トライくんは大勢の子どもたちに囲まれていました。白と赤の日本代表ジャージーに似たラガーシャツ、頭には必勝のハチマキ。ラグビーボールを片手に次々と記念撮影です。撮影の合間に直撃すると「毎日、ワクワクしています」。愛嬌(あいきょう)たっぷりに東大阪市の担当者が代弁してくれました。

トライくんが誕生したのは91年。いまから28年前です。ゆるキャラが全国的にブレイクするきっかけとなった滋賀県彦根市の「ひこにゃん」よりも古株です。高校ラグビーの「聖地」として知られる花園ラグビー場のある東大阪市が「ラグビーのまち」を表明したことがきっかけでした。

少年ラガーマンをイメージし、青と白のラガーシャツにヘッドキャップ。性格は「優しく人なつっこい」。好物はラグビーボールの形に似ている「カレーパン」。

東大阪市にぴったりのキャラクターでしたが、日の当たらない時期もありました。12年には、ゆるキャラグランプリに初参戦しましたが、全国803位の惨敗。苦しい日々でしたが、それでもメゲずに、経験を糧にしました。東大阪市民にもっと知ってもらおうと、同市内の駅前などで街頭活動を繰り広げました。イベントにも自主的に参加する機会を増やしました。この地道な知名度アップ作戦が実り、惨敗から5年後の17年にはゆるキャラグランプリで3位。大躍進でした。 W杯の日本開催が決まったことも幸運でした。担当者によると、イベントへの参加は16年度は約60件、18年度は約180件、19年度は9月末で約100件、18年度を上回るペースです。大阪府内のイベントや、全国のイベントにもオファーがあり、地元のゆるキャラたちとスクラムを組み、ラグビーW杯をPRしてきました。

担当者によると、日本の快進撃の追い風を受けるトライくんは「W杯をもっと盛り上げるために頑張るでえ」と意気込んでいるそうです。【松浦隆司】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)