11月24日付で退団する花組トップスター、明日海(あすみ)りおが25、26日に横浜アリーナで、コンサート「恋スルARENA」を行う。本拠地退団作を控えたプレ・サヨナラ。過去に真矢みき(当時)、柚希礼音が日本武道館公演を行っているが、横アリは105年の劇団史でも初めて。明日海は衣装デザインにも挑戦し、最下位だった100周年運動会の雪辱企画も設けた。4人目の相手娘役、華優希(はな・ゆうき)お披露目公演にもなる。

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劇団初の横浜アリーナ公演。「中央のステージ、長い花道…。今どこを走っているのか、想像しながら(稽古を)やっているんですけど、半分(心が)迷子です(笑い)」。宝塚大劇場は収容約2550人。その6~7倍にもなる最大約1万7000人収容のアーティストの“殿堂”だ。

「あの距離を走りながら歌うって、相当体力がいるんじゃないか」。月組時代は劇団初の準トップ、花組でトップに就き5年半けん引して退く。平成タカラヅカを象徴するトップの1人にふさわしい規模の「プレ・サヨナラ」ステージだ。

「お稽古前に、退団に関する出版物などの撮影をかなりたくさん。ああもう、終わってしまうんだーって、すごく実感しました」

前作の宝塚公演後に退団を発表し、東京公演では前トップ娘役の仙名彩世を送り出した。いよいよ-。感傷に浸りそうにもなる。

「しんみりする楽曲もあるんですけど、怖くてしんみり歌えない。ただ実際、お稽古が始まると、考えている暇はないです」

元星組トップ柚希礼音が、14年に16年ぶり日本武道館公演を行った際は作詞に挑戦。明日海にも依頼があったが「胸の内を悟られるのが恥ずかしい」と辞退。衣装デザインに挑戦した。

「プロローグのお衣装。普段、舞台でかぶらないキャップや、フードも使ってストリートっぽく」と、こだわった。娘役の衣装も手がけた。楽曲は「横浜」や「恋」にちなんだナンバーと、オリジナル楽曲がある。そしてもうひとつ、強い希望を実現させた。

「あの、ですね…。いきなり三味線を弾いたりはしないんですけど…」。舞台では強くセクシーな明日海だが、素顔は穏やかな時間が流れる天然系。笑わせながら明かしたのが、100周年時に開催された運動会の“リベンジ”だった。

「念願の…ちょっと…あの…屈辱を晴らすという…。100周年運動会で花組は惨敗。最下位。個人的には、みんな頑張っていたのに。花組だけ、個人賞ももらえなくて。(トップの)私がすっごい下級生で、おじけづいた部分もあり…。すごく心にしこりがあった。それを今回ここで、優勝をとりにいきたいなって」

柚希が率いた星組が優勝した100周年運動会。明日海はトップ最下級生だった。苦い思い出。今回、運動会を再現するという。

「今なら私、もっと引っ張って優勝できると思います! (運動会会場の)大阪城ホールの思い(悔しさ)を横浜で返したい」。公演2日目の千秋楽は誕生日でもある。「ずっと『(横浜で)誕生日だね』と言われ、誕生日ってまだ? という感じ(笑い)」。

4人目の相手娘役、華優希のお披露目でもある。「いかにリラックスさせてあげるか」と気を配り、そのイメージは「ほっとけない系」と表現。「私がいる間は遠慮せず自由に。華ちゃんらしく。どんどん甘えて、頼ってもらえたら」。

もう運動会の時のような“細さ”はない。強くたくましく、日々、進化し、サヨナラ公演という最終コーナーを前に、横浜を全力で駆ける。【村上久美子】

◆RIO ASUMI SUPER TIME@045「恋スルARENA」(作・演出=斎藤吉正) 宝塚歌劇初の横浜アリーナでのコンサート。ゴージャスでエキサイティングなステージから、進化を続ける明日海りおの魅力を多方面から描き出す。横浜出身の斎藤氏が「横浜」や、公演タイトル「恋」にちなんだ楽曲をセレクト。明日海作品のナンバーに、オリジナル曲もまじえた。一部の衣装デザインは、明日海自身が手がけた。明日海の4人目相手娘役、華優希のトップ娘役初作品。新コンビのお披露目になる。

☆明日海(あすみ)りお 6月26日、静岡市生まれ。03年入団。月組配属。08年「ミー&マイガール」で新人公演初主演。12年、月組準トップ。当時トップ龍真咲と主演役がわり2作。花組へ移り14年5月、同トップ。15年第2回台湾公演主演。華優希が4人目相手役。昨秋に千葉・舞浜アンフィシアター公演を成功させ、今回は横浜アリーナに挑戦。身長169センチ。愛称「みりお」「さゆみし」。