第29回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が5日、決定した。授賞式は28日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われる。

 大ヒットアニメ映画「君の名は。」を手掛けた新海誠監督(43)が監督賞を初受賞した。97年「もののけ姫」の宮崎駿監督以来2人目のアニメ監督の受賞。「アニメ監督で受賞というのは光栄です。賞を取るイメージはなく、お客さんに『楽しいものを見た』と思ってもらえれば、という気持ちだけでした」。

 心と体が入れ替わる高校生の男女の日常に、彗星(すいせい)の落下事故を絡めた切ない恋物語。ターゲットは10~20代にしたつもりだった。「アニメ映画を人生で必要としている世代。学校や家庭で教えてくれないものを少し教えてくれるのがこういう物語」。ところが劇場には幅広い客層が足を運び、日本映画史上2作目の興行収入200億円超えも秒読み。「宮崎駿さんのような作家性の強い監督さんが、アニメのファン層を押し広げた」と、先人に感謝した。

 ロックバンド「RADWIMPS(ラッドウィンプス)」が制作した楽曲との親和性も話題になった。「この場面のための音楽を」と細かく注文、新曲をボツにする苦渋の決断もした。「主題歌4曲ある映画ですが、その倍は作ってくれた。忙しい中、満身創痍(そうい)になりながら走ってくれた。腹が立ってるかも知れないけど」と笑った。

 米アカデミー賞の長編アニメ部門のノミネート審査対象になったが「受賞の可能性はゼロに近い」と冷静に受け止めつつも「50席しかない下北沢の小劇場で僕の作品を見てから、ずっと応援してくれている方もいる。『俺が見つけたあの人が賞まで取った』と言ってくれれば恩返しになる」。「世界の新海」になっても、その目はクリエーターとしての原風景を映している。【森本隆】

 ◆新海誠(しんかい・まこと)1973年(昭48)2月9日、長野県生まれ。中大卒業後、ゲーム会社に就職するも退社。02年「ほしのこえ」で監督デビュー、新世紀東京国際アニメフェア21(公募部門)で優秀賞。07年「秒速5センチメートル」でアジアパシフィック映画祭最優秀アニメ賞。

 ◆君の名は。 東京に住む男子高校生瀧(神木隆之介)と、田舎の女子高生三葉(上白石萌音)は、あるきっかけで心と体が入れ替わるようになる。ある日を境に入れ替われなくなった瀧は、過去に起きた彗星(すいせい)落下事故との関係に気付く。

 <監督賞・選考経過> 「君の名は。」の新海監督について「多くの若い人たちが癒やされた。メッセージ性もある」(福島瑞穂氏)などと高く評価する声が相次いだ。1回目の投票で過半数を獲得。