「世界一の父と母でした」。津川雅彦さん(享年78)と朝丘雪路さん(享年82)の「合同葬お別れの会」が21日、東京・青山葬儀所で営まれ、黒柳徹子(85)ら約1100人が参列した。長女の女優真由子(44)は7月に結婚した俳優友山裕之助(45)を傍らに喪主あいさつ。最後は「お父さん、お母さん、千秋楽、お疲れさま」と涙で語りかけ、斎場には「津川!」「朝丘!」の掛け声と大きな拍手が鳴り響いた。

両親の葬儀が、今年7月に結婚した夫のお披露目になった。喪主あいさつの真由子に寄り添ったのが俳優友山裕之助。演劇仲間で10年来の交際だったが、津川さんは結婚に反対していた。しかし、4月に朝丘さんが亡くなった後、7月に津川さんの許しを得て、婿に入る形で結婚した。津川さんが8月4日に亡くなる1カ月前だった。

真由子は「生前、父と母は『ジメジメとした葬儀は嫌。パーティーのように盛大に』と言ってました。ジメジメしたあいさつでなく、笑って父と母を送り出したい」と切り出した。「亡くなった直後は平気で、乗り切れるかもと思ったんですが、今はつらいです。父が気に入ったティッシュボックスをスーパーで見て泣き、母のCDを聴いて泣いています。笑ってしまうくらい泣いています」と明かした。

4月27日に亡くなった朝丘さんの百か日に、津川さんは後を追うように亡くなった。真由子は「そんなに仲が良かったかな」と苦笑しながら「理想の父と母でなかった。父は家族より先輩や後輩を大事にしてやりたいことをやった。母は何もできないお嬢さまで、自動販売機に『朝丘です』と言うんです。『小銭入れないと』と言うと、『大丈夫よ』と言う母に、大丈夫かなと思いました」。

11年の東日本大震災の時に津川さんから電話が入った。「心配してくれるのかなと思ったら、『みんな大変なんだ。堂々と胸を張って、日本人として死ね』と言われた。度肝を抜かれる父と母で、完璧ではなかったけれど、私の中では世界一の父と母でした。2人の娘で良かった」としみじみ話した。

最後に参列者に2つのお願いをした。「記憶の中で、父と母のことをいつまでも思い出してください」。そして、「人生の舞台の千秋楽を、大向こうと拍手で送ってください」。真由子が「お父さん、お母さん、千秋楽、お疲れさま」と涙ながらに叫び、裕之助が「津川!」「朝丘!」と声を掛けると、大きな拍手が斎場を包んだ。【林尚之】