「#八郎沼」にハマる…スカーレット松下洸平の素顔

NHK連続テレビ小説「スカーレット」(月~土曜午前8時)で十代田(そよだ)八郎役に大抜てきされた俳優松下洸平(こうへい、32)が報道各社のインタビューに答え、社会現象化の気配を見せる「#八郎沼」などの人気急上昇ぶりに「いま応援してくださる人たちが変わらずに、ずっと応援し続けていただけるようにがんばらないと」と決意を新たにした。

戸田恵梨香(31)が扮(ふん)するヒロイン・喜美子の陶芸と人生に大きな影響を与える八郎。松下の全身全霊をかけた好演は大きな反響を呼び、ツイッターには、その人の魅力や趣味にどっぷりハマっている意味の『沼』を使ったハッシュタグ「#八郎沼」が発生。ファンが日々、魅力をつぶやいている。

「凄すぎる…!! #八郎沼にハマった私はもう地上に上がれないですね」「松下さんのお芝居、好きやなぁ。はじめから、ずっと。毎日しみじみ感じるどんどん感じる。揺らぎと、独特のテンポと間合いと。すごく生っぽくて体温が滲んでいて、心にすっと沁み入ってくる」。

14日にドラマの舞台でもある滋賀県甲賀市内で行われたイベント後には“八郎沼状態”の多くのファンが出待ちした。「ああやってお見送りをされるのは、こっ恥ずかしいですね」と照れ笑い。人生最大の? モテモテぶりには「いま応援してくださる人たちが変わらずに、ずっと応援し続けていただけるようにがんばらないといけないなと思います」と気を引き締めた。

朝ドラのオーディションにはこれまで3回、挑戦したが、書類審査で落選したこともあった。1次審査より上の段階には行ったことがなかった。「自分に何が足りないのだろう。朝ドラに出演するにはどうしたらいいのか…」。自問自答を重ねた。

壁は高く、順風満帆の道程ではなかった。08年に絵を描きながら自分の曲を歌うパフォーマンス「ペインティング・シンガー・ソングライター」としてライブ活動をスタートし、同年11月にメジャーデビュー。「最初、音楽はまったく売れず、お客さんが4、5人のところでライブをしていました」。22歳のとき、ミュージカル「GLORY DAYS」で初舞台。「こんな楽しいことがあるんだ」。演劇の魅力にとりつかれ、音楽活動を休止して俳優業に専念した。

俳優として前向きな気持ちが途切れそうになるときもあった。朝ドラのオーディションの落選が続き「自分はこの仕事には向いていないかもしれないなと思う瞬間は何度もあった」。

スカーレットの劇中、八郎が陶芸展に出品するために製作した作品を丸熊陶業の若社長がダメ出しをするシーンがある。松下は当時の俳優としての心境をこのシーンに重ね合わせ、こう説明した。

「人に評価されて自分の価値を知る。作品を否定されると、自分自身を否定されるのと同じ気持ちになってしまう。その気持ちがよく分かる。がんばってもがんばっても結果が出ない。何が原因? できない自分を責めるんですよね。それをやっていくうちに心が削れていって、マイナスな方向に行ってしまう。自分には向いていないじゃないか。そこで何度もあきらめようと思った経験はあります」

心が折れそうな松下を後押ししたのは周囲の人たちだった。新しい舞台の仕事などサポートに心血を注いでくれたという。

舞台で俳優としてキャリアを重ねていくうちに、気づいたことがあった。朝ドラのオーディション落選もバネにした。

「合格、そんな方法はなく、答えはない。何度もトライして、単純に自分が納得できる芝居をする。それしかない。そう思った。自分をよく見せようとか、着飾る必要はなく、真剣にお芝居と向き合っていれば、いつか結果が出る」

スカーレットのオーディションでは不思議と、気負わずに臨めた。

「余計なことをせず、純粋にいただいたせりふを読むことを心がけた。それが八郎につながったのなら、なにか、自分が10年やってきたことは間違っていなかったんだな」

18年には「文化庁芸術祭」の演劇部門での新人賞、今年2月には舞台「母と暮せば」とミュージカル「スリル・ミー」での好演で「第26回読売演劇大賞」で優秀男優賞、顕著な活躍をした新人に贈られる杉村春子賞を受賞した。

朝ドラの出演を一番、喜んでくれたのは母だった。陶芸のシーンでは八郎の細くて繊細そうな指が映し出されるシーンがある。「#八郎沼」では演技だけなく、手をほめるつぶやきもある。「『指が長いね』とはよく言われますね。母も兄もまったく同じ手です。みなさんが手をほめてくださるので、最近はハンドクリームを塗るようにしてます」と笑わせた。クリエーティブな感性について「母からもらったものがすべて」とほほ笑んだ。

俳優業専念のため、音楽活動は休止したが、年に1回はライブを行ってきた。ここ2年は開催できていない。「スカーレットを通して、得た気持ち、出会った人たちのこともいろいろ考えて、これを形に残したい。そのツールの1つとして、ボクには音楽がある。みなさんとの出会いを歌にしたい」。伝えたい思いはいっぱいある。来年にはライブを再開することを誓った。