尾上菊之助(43)が、東京・国立劇場3月歌舞伎公演「時今也(ときはいま)桔梗旗揚」(同4日~27日)で、明智(役名は武智)光秀を演じる。

菊之助は演目を選んだ理由を2つ挙げた。1つは義父中村吉右衛門が何度も演じた役であこがれがあったこと、もう1つは光秀のイメージが主君に反旗を翻したというだけでなく天下太平を望んでいたという解釈に再構築されたこと、だそうだ。菊之助はNHK大河ドラマ「麒麟がくる」のファンで影響を受けたことも明かした。

鶴屋南北作の「時今也桔梗旗揚」の光秀は、耐えて耐えてという役どころだ。信長(役名は小田春永)から理不尽な仕打ちを受け、馬を洗うたらいで酒を飲ませられ、かつての貧しさを暴露されるという恥辱を受ける。無念の思いが変貌し、本能寺の変に至る様子が描かれる。

菊之助は「内面、心の積み上げが大切」と語っている。吉右衛門と稽古をする中で感じたことは大きいそうで「これまで客席で見ていた時は、岳父の芸の大きさ、形の美しさに見入っていましたが、それは結果であって、内面が積み上がっていることが大事だと分かりました。心の積み上げがないとただのものまねになってしまう」と話す。吉右衛門からは形やせりふで大事なところは教わっているが、内面を埋めるのはあなた自身です、という言葉ももらっていることを明かした。

菊之助がどう解釈し、どう内面を積み上げて作っていくのか、楽しみにしている。

今回は演目の前に「入門 歌舞伎の明智光秀」という解説もある。菊之助は「歌舞伎に触れたことがない人も、そうでない方も、大河を見ていた人も楽しんでいただける」と、麒麟ファンへもPRしていた。