男子100メートル(切断などT64)はアジア記録保持者の佐藤圭太(27=トヨタ自動車)が12秒15で優勝した。

1勝1敗で迎えた今季デビューの新星、井谷俊介(23=ネッツ東京)との3度目の対決。佐藤は終盤の加速で井谷をとらえ、0秒02の胸の差で先んじた。辛うじて競り勝った印象も、レース後は喜びを爆発させるでもなく「いまひとつ。練習ではベスト(11秒77)に近いタイムが出ていたので、11秒台は出せると思っていた」と不満顔。1・8メートルの向かい風がうらめしそうだった。

7月の関東パラで今季デビューの井谷に0秒02差で敗れた。6日後のジャンパンパラでしっかりと雪辱したが、16年リオデジャネイロ・パラリンピック400メートルリレー銅メダリストに土をつけた今季デビューの新星の評判はうなぎ上り。3度目の決着が注目されていたが、佐藤は「周りが騒ぐので意識しないことはないけど、僕の目標は井谷に勝つことではなく、世界で勝つこと。井谷の走り方もいいところがあればまねをしたいし、僕のいいところも盗んでほしい。それで全体的にレベルアップすればいい」と余裕を漂わせた。

10月のアジアパラでは2大会連続の短距離2冠に挑む。そのために先月、右足ひざ下の義足をやや反発の高いものに替えた。「現在のアジアランクでは僕が1番で中国の選手が2番、井谷が3番。自己ベストを出せば優勝できる」。新星の猛追にも、王者の自信は少しも揺るいでいなかった。【首藤正徳】