さあ、いよいよ真打ちの出番だ。侍ジャパンが7日、正式競技としては初の金メダルを懸け、東京五輪決勝の米国戦(横浜スタジアム)を戦う。6日は東京・大田スタジアムで全体練習。4番を託されるのはもちろん不動の鈴木誠也外野手(26)だ。今大会は準決勝までの4試合でわずか1安打。恩師の二松学舎大付・市原勝人監督(56)は運命の一戦に臨む教え子へ、心の解放を願ってやまない。

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決戦前夜、鈴木誠に必要以上の気負いは感じられなかった。三塁や遊撃でノックを楽しんだ後、栗原と打撃論議。セミの声と車の走行音が入り交じる中、1球1球、丁寧に打ち込んだ。

2日の米国戦でアーチを架けたものの、準決勝まで4試合で15打数1安打。それでも感情にブレはない。

「早く大会の日が来ないかなって思っています」

「雰囲気だったりを楽しみたい」

「いいことばかりを考えて日々過ごしています」

7月19日の強化合宿初日から一貫してきたポジティブシンキングを、運命の一戦で最大限に体現する。

東京五輪の決勝戦。対するは野球王国、米国だ。東京都荒川区からのし上がってきた4番にとって、これ以上ない舞台が整った。

戦う相手が強くなればなるほど、気持ちが高ぶる。底力を発揮する。

二松学舎大付の市原監督には、今も脳裏に焼きついて離れない花巻東グラウンドでの記憶がある。

1年夏の東東京大会を終えた直後の東北遠征。当時まだ全国区ではなかった同学年の大谷翔平(現エンゼルス)と練習試合でぶつかった。その剛速球に仲間のバットが空を切り続ける中、鈴木誠だけは目を輝かせて打席に入り、左中間に会心の当たりを弾ませたのだという。

「その時、これはもしかしたらプロに行く選手なのかなと思いましたね」

大リーグ屈指のスーパースターと侍ジャパン4番の初々しい対決を、恩師は懐かしそうに振り返る。

「仲間が好きで、チームが負けると、すごく悔しがる子でした。勝つことが最大の喜びで、後から自分がついてくる感じ。野球は仲間と遊ぶツールだったんじゃないですかね」

市原監督がそう評するスラッガーからすれば、国際大会は原点に戻れる貴重な空間なのかもしれない。

シーズン以上に個人成績は二の次で、仲間と勝敗だけに一喜一憂できる期間。だからこそ、想像を絶する重圧を浴びる決勝でも鈴木誠也らしくプレーしてほしいと、恩師は切に願う。

「日本の4番ではありますけど、あまり立派な感じに仕上げてあげないでほしいんです。孤高な人は孤独になる。誠也はもっとおもしろいし人懐っこいし、みんなとワイワイしたい子なので。五輪では打てなくてもしょんぼりせず、自分も調子がいいかのように仲間と盛り上がれている。大変だろうけど、なんとか最後まで楽しんでほしい」

金メダルを懸けた頂上決戦。野球人の本能を前面に押し出す瞬間が、いよいよ訪れる。【佐井陽介】

▽稲葉監督(4番鈴木誠に)「結果は今、残っていないが四球を選んだり、周りが非常にいい流れで来ているので変えなくていいのかなというのもある。誠也も今、やれることを精いっぱいやってくれているので、最後まで信じていきたい」