全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。東日本予選を19年ぶりに制した富士通が、旭化成の連勝ストップに意欲を見せている。その中心となるのが4区候補で、マラソンでもMGC(※)出場権を獲得している中村匠吾(26)だ。チームの大黒柱に成長し、富士通にとって10年ぶりのニューイヤー駅伝制覇のキーマンとなる。

中村は初マラソンだった今年3月のびわ湖毎日マラソンで2時間10分51秒をマークして日本人トップでゴールした。暑さの中のレースだったが、終盤で粘って2時間11分00秒のMGC出場権獲得タイムをギリギリながら突破した。さらに9月のベルリンでは2時間8分16秒と自己記録を大幅に更新。五輪代表の有力候補に挙げられるまでになった。

マラソンの前日本記録保持者・設楽悠太(27=ホンダ)のように、最初から高速で入るスピードがあるわけではない。だがびわ湖で見せたように、スピード持久力や終盤の粘りが、マラソンを強化する中で身についた。中村は「自分の持ち味はスタミナです。駒大の4年間でそこを伸ばしてきましたが、世界で戦う上でトラックのスピードも必要だと判断して、富士通入社後はスピード強化に力を入れてきました」と自身の成長に手応えを感じている。

富士通の1区候補は東日本予選5区区間賞の佐藤佑輔(28)と、3000メートル障害で17年世界陸上代表だった潰滝大記(25)。2区のインターナショナル区間は、新外国人のキメリ・ベナード(23)が起用される見込みで、東日本3区に続いて区間賞を期待できる。そして3区も、5000メートルで日本代表を狙う松枝博輝(25)が区間賞候補だ。彼らが順当に走れば4区候補の中村にトップでタスキが渡る可能性が高い。

「仮に追いつかれたとしても、終盤で勝負したい」と中村。「そこで引き離せればチームの優勝が近づくと思いますし、個人の区間賞も可能性が出てくると思います。(4区の)22キロトータルで勝負します」と意気込む。

5区候補にはベテランの星創太(30)や、前回まで2年連続で4区を走った横手健(25)の名前が挙がっている。横手は今季不調に苦しんだが、11月以降徐々に調子を上げている。そして6、7区のどちらかに佐藤か潰滝を残すことができるのも今年の富士通の強みだ。

富士通は東日本予選を勝負優先でなく、若手やトラック主体の選手などを試す場と位置づけて挑んだ。今年もそのスタンスながら、優勝したことで自信が膨らんだ。00年に東日本予選を勝った時は、ニューイヤー駅伝も制した。当時のエースだった高橋健一駅伝監督(45)は「20世紀最後の大会で、あのときも旭化成の連勝を3で止めました。平成最後の今回も旭化成の連勝を止めますよ」と言葉に力を込めた。エースの充実と、各区間に合った選手がそろったこと、そして旭化成との巡り合わせ。富士通にも優勝のチャンスは十分にある。

※MGC=マラソン・グランドチャンピオンシップ。東京五輪マラソン代表選考会。詳細はこちら>>