先日、国連広報センターの根本かおる所長にインタビューした。東京スカイツリーが10月24日から28日まで、国連創設75周年を記念してSDGs(持続可能な開発目標)の17項目を示す17色にライティングされた。そのイベントを記念する対談が行われたのだ。

会話の中で考えさせられることが多くあった。国連75周年を記念して製作された「NATIONS UNITED ともにこの危機に立ち向かう」という30分強の動画も見た。“WE’RE ALL PART OF THIS”という言葉が印象的だった。そのことも受けて紹介したいと思う。


東京スカイツリーで国連広報センターの根本かおる所長にインタビュー
東京スカイツリーで国連広報センターの根本かおる所長にインタビュー

インタビューの会場となったのは、もちろん東京スカイツリーだ。東京のシンボルの1つ。巨大な電波塔であり、商業施設が集まる場所でもある。プライベートで上ったこともあるし、よく行く浅草の街からもよく見えてなじみ深い。

そんなスカイツリーに上って、外の景色を見たとき、人はどんな感想を持つだろうか。私はまず「家がたくさんあるな」とか「富士山がよく見える」とか単純に感じたが、根本所長の言葉にはハッとさせられた。

「こういう高いところに立つと、世界は1つなんだなと感じますよね」。

加えて「謙虚な気持ちになる」とも。交流があるという宇宙飛行士の方たちから「宇宙から地球を見て感じることは『地球は1つ』なんだということ」と言われたことも教えてくれた。

客観性とはまた異なるかもしれない。国連が75周年を記念して製作した動画でも、SDGsでもっとも重要なもののひとつとして、気候変動や不平等などの言葉を何度も挙げていた。またこの新型コロナウイルスによるパンデミックへの世界危機についても触れていた。

そもそも、SDGsとは、持続可能な開発のための2030アジェンダの一部であり、2015年9月に採択されたものだ。国連加盟国全てが賛同した。そこから、数々の問題に取り組んできた。


SDGs目標(1)「貧困をなくそう」では、30年前に19億人いた極度の貧困に苦しむ人が7億3400万人に減少した。しかしまだ世界の人口の10%いる。

目標(13)「気候変動に具体的な対策を」では、1880年から2020年にかけて化石燃料を原因とする二酸化炭素が著しく増加している。日本でも「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と菅首相が10月の所信表明演説で示した。

目標(14)「海の豊かさを守ろう」では、2050年までには魚よりも海洋プラスチックが多くなるとも言われている。

どれも自然に起こったことではない。人が招いた問題だということをお伝えしたい。


この17項目の意味、現状を理解することは、自分たちにできるまず第1歩だと感じる。

根本所長と話す中で、「スポーツとSDGs」についても聞いてみた。すると所長は「スポーツは人が苦しい立場におかれたときに、それを乗り越える力を与えてくれる。さまざまな人を団結する力を備えている」と答えた。所長も難民キャンプで支援活動をする中で、スポーツが人々の心を集約する存在であると感じたという。


東京スカイツリーからの景色
東京スカイツリーからの景色

今まさに、時代が変化してきている真っただ中。「『昔が良かった』と過去にとらわれのろのろと進んでいくより、みんなで一致団結しスピード感を持って前進していくこと」。俳優であり、SDGsアドボケート(提唱者)のフォレスト・ウィテカーさんは、動画の中で語っていた。

「謙虚に」という言葉の意味が自分の中でおおいに変わった瞬間だった。この地球規模で世の中を見ると、今まで思っていたものと異なったものだったと感じた。

根本所長、ありがとうございました。またこの機会を与えていただきありがとうございました。(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)

◆対談の動画を公開中(https://youtu.be/TVO8i6_1kzk)