20年東京五輪で5連覇を目指す伊調馨(34)が、リオデジャネイロ五輪以来2年8カ月ぶりの国際大会で黒星を喫した。初戦の2回戦で厳地恩(韓国)にテクニカルフォール勝ちし、続く準決勝で昨年アジア大会優勝のチョン・ミョンスク(北朝鮮)と対戦。開始30秒で正面タックルから2点を失うと、その後もタックルなどで失点し第1ピリオド1-7。第2ピリオドの終盤に追い上げたものの、4-7で完敗した。

まさかの黒星にも、伊調は淡々としていた。飛び上がって喜ぶ相手とは対照的に、冷静さを貫いた。「試合の入りが、いい状況ではなかった」「組みぎわからのタックルが強烈だった」と終わったばかりの試合を振り返った。「相手は若い(25歳)ので、前半から来るのは分かっていたんですが」と言って、少しだけ悔しそうな顔もみせた。

昨年12月の全日本選手権に優勝した時から言われていた「腰の高さ」。指導する田南部力コーチは「全盛期に比べて3センチ高い」と指摘した。この日の初戦で相手の頭が当たって前歯が折れた。「分かってはいるんですが、バッティングしたりとか」。伊調はアクシデントの要因が腰高にもあることを自己分析した。

もともと相手に足さえ触れさせない完璧なディフェンスが伊調の武器。14、15年は2年間失ポイント0で勝ち続けた。この日は正面からのタックルをまともに受け、バックを取られてローリングまでされた。まさかの失点を重ねての完敗。「大きな課題があることを改めて感じた」と話した。

もっとも、敗戦をバネに強くなるのが伊調のたくましさ。16年1月の国際大会でモンゴル選手に0-10でテクニカルフォール負けを喫したのが、半年後のリオ五輪での4連覇につながった。強い相手の存在が、自分の強さにつながる。それを知るからこそ、3年ぶりの対外国人相手の敗戦にも「すべて経験。これを生かせれば」と言い切った。