サッカー界の「キング」カズが、生まれ変わった国立競技場のピッチに最初の1歩をしるした。来季J1でプレーする横浜FCのFWカズ(三浦知良、52)が21日に行われたオープニングイベントの第1部に登場。緑の芝に誰よりも早く足を踏み入れる大役をこなし、ピッチの上で得意のドリブルを披露した。6万観衆の声援を受けて「みなさんの力で新しい歴史を作りましょう」。カズの1歩が、新しい日本の「聖地」の扉を開いた。

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照明の落ちたスタジアムにレーザー光線が走る。春畑道哉「Jのテーマ」のギターが響く。93年5月15日に旧国立競技場で行われたJリーグ開会式を思い出させる演出の中、背番号11のカズが登場した。青を基調としたユニホームは、愛着のある90年代のものをミックスしたオリジナル。大歓声を浴びながら、少しずつピッチへと歩み寄った。

歴史的な1歩を緑の芝にしるすと、そのままセンターサークルまで歩き、ボールをセットした。「自分にとって大切な場所。新しくなった国立のピッチに立てて誇りに思う」とあいさつ。ピッチの感触を楽しむようにドリブルし、バックスタンドに向けてシュート。はね返りのボールで再びドリブル、今度はメインスタンドの観客へ蹴りこんだ。

心の底から楽しんだ。Jリーグ20点、日本代表Aマッチ29点。日本リーグ時代やカップ戦、代表B、Cマッチを合わせれば国立でのゴールは数え切れない。もっとも、すでにJ2リーグ戦の10年9月に決めた最後のゴールからは9年以上。だからこそ、久しぶりの国立はうれしい。「本当に幸せです」と力を込めた。

J開幕と同じ演出は思い出深かったが、26年の月日は長い。スタジアムは新しくなったが、カズ自身の年齢は倍になった。白髪はスポットライトを浴びて目立ったし、体の衰えは隠せない。それでも、サッカーへの意欲は変わらない。13年ぶりにJ1で戦う来季に向けて、グアム自主トレから19日に帰国したばかり。国立は新しくなったが、カズはまだまだ変わらない。

この日のイベントで、モチベーションはまた高まったはず。誰よりも国立に強い男。「国立でゴールを決めたい」が現実になる可能性もある。「みなさんの力で新しい歴史を作っていきましょう」と呼びかけたが、もちろん自分自身も新たな歴史を作るつもりだ。【荻島弘一】

◆カズと国立競技場 19歳の時にパルメイラスの一員としてキリン杯に出場。国立での決勝でブレーメンと対戦したが、出場はなかった。初試合は読売クラブ(現東京ヴェルディ)入りした直後の90年11月、コニカ杯決勝の対ヤマハ(現ジュビロ磐田)戦。代表での初戦は翌91年6月1日のキリン杯決勝で、トットナムを相手に2得点して勝利に貢献した。Jリーグでは開幕の横浜マリノス戦を含め32試合して20得点。1試合平均0・63点で、最も得点率の高い競技場でもある。日本代表でも国際Aマッチ22試合で歴代最多の29得点を決めている。