「ひどい内容で。0点に近い」

21年世界選手権王者の丸山城志郎(29=ミキハウス)は、優勝という結果とは正反対の言葉を第一声で放った。

苦しんでいた。「全力を注いで作り上げていった」と乗り込んだ世界選手権(10月、カザフスタン)の決勝で、宿敵の阿部一二三(パーク24)に敗れた。失意。「気持ちの面でなかなか次に向けてというのができなかった。中途半端。何をやってるか分からない。そんな毎日でした」。

ただ、試合は待ってはくれない。作りきれない精神面では、本人が「負け試合」という試合も無理はなかった。「1回戦も準々決勝も準決勝も」。特に田中龍馬との準々決勝では、担がれて技ありを取られたかにみえたが、相手が頭から畳に突っ込んでいると反則負けとなって勝ち上がっていた。

決勝で服部辰成をともえ投げで退けた後に、ぽつりと言った。「毎日腐らずに稽古はしてきた。その貯まっていた貯金で、調子が悪くても勝てたのかな…」。練習でも投げるのに苦戦する毎日でも、稽古だけは続けた。なぜ打ち込むのかも分からない日々だったが、次につながる優勝という結果だけは残せた。

パリ五輪の代表争いでは、阿部にリードを許している立場は変わらない。このままでは、やはりいつかまた負ける。危機感は募った。

「また強い丸山城志郎を見せられるように。一回りも二回りも成長した姿を見せられるように頑張ります。パリ五輪を自分の力で切り開いていきたい」。

その言葉は鋭く、自分への叱咤(しった)だった。