13日に岩手・釜石鵜住居復興スタジアムで行われる予定だったラグビーワールドカップ(W杯)1次リーグB組最終戦、ナミビア対カナダは、台風19号の影響で中止となった。

両チームの入場時に、審判団とともに試合球を持って入場する「ボールデリバリーキッズ」の少女も、晴れ舞台に立てなかった。釜石市の小学校に通う少女の父が、フェイスブックに投稿したストレートな思いが反響を呼んでいる。11年の東日本大震災を教訓に、被災地の子どもたちは人命の尊さ、復興の大切さを学び、しっかりと胸に刻んでいた。

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地元釜石の佐々木璃音(りお)さん(小4)は、ナミビア-カナダ戦でボールデリバリーキッズを務めることになっていた。大会スポンサーのDHLが募集。「熱いスポーツ体験」をテーマにした作文などをもとに、応募1152人から20人に選ばれ、地元での第2戦を任せられた。釜石南高(現釜石高)時代にラグビー部だった父忠平さん(35)の影響で小1から釜石シーウェイブスJr.でプレーを始めた。「自分が生まれた町で行われるW杯の舞台に立てるのはうれしい」と、両国国歌をユーチューブで勉強し覚えるなど、懸命に準備を整えていた。

晴れ舞台を楽しみにしていた忠平さんは、中止を告げた際のわが子の反応に驚いた。「目には涙をためていたけど我慢していた」。台風の影響で前夜から雨が激しく降り続く中、娘は冷静に中止を覚悟していた。「いくらワールドカップでもこんな災害の時にやらないよ」。東日本大震災で甚大な被害を受けた釜石市で、幼い頃から自然災害の怖さを学習してきた。

くしくも試合開始予定時間には青空が広がったが、台風の爪痕は予想以上に大きかった。市街地の道路は冠水し、土砂災害なども発生した。忠平さんは仕事を終えた午後2時から約3時間、シーウェイブスの選手たちとともに、ボランティアで土砂の除去作業などを行った。「被害を目の当たりにしたら中止は正解だったと思います」。

ワールドラグビーは、被災地での開催の意義を考え、開始時間の変更も選択肢に決定をギリギリまで遅らせたが、最終的には地元の高い災害意識が影響したと見られる。「震災からの復興を発信するためのスタジアムで、この決断をしたのは大きな意味があると思う」と忠平さんは話した。

璃音さんは日本代表FB松島幸太朗(26)のファン。「まだ小さいので将来何もわからないけど、ラグビーでも何でもいいので、目の前に集中できるものを見つけて続けてほしい」と父は娘の成長を願った。【野上伸悟】

 

(フェイスブックの投稿は以下)

 

佐々木忠平>ラグビーファミリー

 

おはようございます。

 

初めて投稿致します。初の投稿が長文となり申し訳ございません。

 

先ほど、釜石で開催予定でしたラグビーワールドカップ2019カナダ対ナミビアの中止が発表となりましたね。

 

今回の中止となった試合のマッチボールデリバリーキッズを担当する予定だったのはわが家の長女でした。

 

長女は現在小学校4年生で、釜石でラグビーを1年生の時からプレーしております。

 

今年の春先にマッチボールデリバリーに当選したことを知った時、長女は跳んで喜んでおりましたが、一生に1度の素晴らしい体験ははかなく消えてしまいました。

 

釜石で生まれ、釜石でラグビーを始め、釜石でワールドカップの試合が開催され、そのマッチボールデリバリーキッズとなることができる。その事にどんな想いが詰まっていたことか…長女に試合が中止になった事を伝える前に私が泣いてしまいました。

 

先ほど、スポンサーサイドよりあらためて中止の連絡を受け長女に台風の影響により中止になったことを伝えたところ、半年以上前から楽しみにしており、カナダ国歌とナミビア国歌を暗記してきたことから大泣きすることを覚悟で伝えましたが、意外と冷静な反応で受け止めておりました。

 

もちろん、悲しさや悔しさ、台風への憤りはあると思うのですが、それにしても冷静すぎると思い、真意を聞いたところ、今週始めから台風が来ることはわかっていたこと、東日本大震災を1歳で経験し、その後災害について学習を徹底的にしてきた子どもたちですので、人命第一であり災害時にイベントをやるわけがないと思っていたとのことです。

 

私はハッとさせられました。

 

8年前にわが家の家族は震災により人命は守ることができましたが家財の大半と住むところをなくしました。釜石市を含む東北太平洋側の沿岸部は未曽有の被害を受け、やっと復興が形になってきており、災害時にまずは生きることが何よりも大切なことを身をもって体感したはずの私達ですが、今回の試合中止の判断に時間をずらしての対応は出来ないのか? 無観客試合でも開催できないのか? と異議を唱えるところでした。

 

わが子の一生に1度の体験は台風によりなくなりました、事前にスポーツ新聞や地元のメディアの取材に対応し、いよいよ本番という時に台風によりその貴重な機会を失うことになった長女がかわいそうだと思いましたが、それよりもまずは人命、建物被害等に見舞われた方のことを思い災害復旧に努めるのが我々ラグビーに関わる方々の本来の姿である事を先ほど長女に気づかされました。

 

台風の被害に遭われた方々の一刻も早い復興を心からお祈りしておりますし、東日本大震災時に受けたご恩は忘れておりません、私達も出来ることを手伝って行きたいと考えております。

 

そして、10月12日に残念ながら中止となってしまった2試合のマッチボールデリバリーキッズやエスコートキッズ、楽しみにしていた観客の皆様、わが家の長女を含めた釜石での開催を熱望されていた皆様に、今後違った形で幸せが訪れることを願っております。

 

わが家の長女はラグビーは素晴らしいスポーツだと言い、これからももちろん続けると意気込んでおります。

 

組織委員会の下した決断を私は正解だったと思います。

 

皆様、まだまだラグビーワールドカップ2019大会は続きますし、これからますます盛り上がります。一緒に楽しみましょう!!

 

長文失礼致しました。