静岡・掛川市出身で、平昌パラリンピック(3月9日開幕)のスノーボード競技2種目に出場する山本篤(35=新日本住設)らが15日、川勝平太県知事(69)を表敬訪問した。夏季パラの陸上競技で計3個のメダルを持つ山本だが、冬季パラは初出場。「メダルは無理です」と言いながら、パラリンピックの認知度をさらに高めるべく、雪上で戦い抜くことを誓った。

 山本は、落ち着いた表情で知事室に入った。夏冬の二刀流。平昌パラへの出場は今月9日に正式発表されたばかりで、大勢の報道陣に囲まれながら川勝知事に伝えた。「メダルは難しいので入賞を目指します」。山本から説明を受け、本格的にスノーボード競技を始めて約1年で出場権をつかんだことを知った知事は、「素晴らしい1年を経験されましたね」と感嘆の声を上げた。

 出場は、国際パラリンピック委員会からの招待枠。山本は、報道陣にも冷静に現状を伝えた。「経験と実力不足です。ただ、パラリンピックを知ってもらう良い機会なので、最大限のパフォーマンスをし、まずは入賞を狙いたいです」。

 本来は陸上選手の山本は、夏季パラに2008年の北京大会から3大会連続で出場し、計3個のメダルを手にしている。16年リオ大会では走り幅跳び銀、400メートルリレー銅メダル。東京パラ出場も狙っているが、17年1月、平昌パラへの挑戦を発表し、世間を驚かせた。中1から趣味で楽しんでいたスノーボードでの出場を目指し、同2月の全国障がい者スノーボード大会でいきなり優勝。同8月には強化選手になり、同9月にW杯ニュージーランド大会で6位に入った。「20年東京五輪があるからこそ、パラリンピックを知ってもらいたくて、冬季競技にチャレンジしようと決めました」。

 山本は、トーナメント方式でスピードを競うスノーボードクロス(3月12日)と、3回の滑走でベストタイムを競うバンクドスラローム(同16日)の2種目に出場する。同8日には現地入りするが、前日7日には第1子が誕生予定。戦いの場に向かう山本だが、「立ち会いたいですね。妻は『早く出てこい』と言っています」と話し、報道陣を和ませた。【大野祥一】

 ◆山本篤(やまもと・あつし)1982年(昭57)4月19日、掛川市生まれ。掛川西-大体大-大体大大学院。掛川西時代はバレーボール部で、2年時のバイク事故で左大腿(だいたい)部から下を切断。01年3月の卒業後、名古屋の日本聴能言語福祉学院義肢装具学科に入学し、陸上競技を開始。04年、大体大に入学。パラリンピックは08年北京から3大会連続出場。メダルは12年ロンドン大会で走り幅跳び銀。16年リオ大会で走り幅跳び銀、400メートルリレー銅メダル。家族は妻。167センチ、60キロ。