平昌(ピョンチャン)パラリンピックのスノーボードで金、銅メダルを獲得した成田緑夢(24=近畿医療専門学校)が走り高跳び(下肢機能障害などT44)に出場し、1メートル75の好記録をマークした。

 「もう、100点満点ですね、はい。平昌の脳を生かしました」。競技を終えてメディア関係者に囲まれると、底抜けに明るい“緑夢スマイル”を振りまいた。今季初の陸上大会で、練習も一切なし。ぶっつけ本番で自己ベストの1メートル80に迫った。そして、平昌の脳とは…。

 成田は言う。「遠心力を利用して、バーの真っ正面から助走をスタートしたんです」。金メダルを獲得したバンクドスラロームのターンのイメージそのままに、大きく時計回りに半円を描くような助走。この日の練習でひらめいて、1時間足らずの間に考案した新ジャンプ法だ。「僕の脳がフル回転した結果です」。天性の運動能力と独特の感性で勝負する男ならではだった。「自信がなくて」と1メートル50から跳び始め、5センチずつバーを上げていった。1メートル75は2回失敗したが、ラストチャンスでクリア。「もう、エネルギーを使い果たしました」と、それ以上の跳躍はキャンセルした。

 平昌限りで冬季競技卒業を宣言し、夏季の五輪、パラリンピック出場を「人生の夢」として掲げた。24年パリ大会でのダブル出場を狙っているが、2年後に迫った東京でどんな競技に取り組むかについては「今、探し中です」。平昌後の2カ月間はゴルフに熱中したというが、幅広く可能性を探っているようだ。「う~ん、秘密ということでお願いします。走り高跳び? 可能性の1つではありますが、五輪出場につながるような競技がいいですね」。成田は夢を楽しむように言った。【小堀泰男】