初出場の広中璃梨佳(20=日本郵政グループ)がトレードマークの帽子を脱ぎ捨て、16年ぶりに日本記録を更新した。

14分52秒84をマークして9位。福士加代子が05年に記録した14分53秒22を上回った。

広中にとって帽子はレースで必ず着用するアイテムだ。長崎・桜が原中の頃からかぶっており「雨の日の視界が悪くならないように買ったのがきっかけ」。それ以降、母が購入した青いキャップは、晴れた日でも試合や重要な練習の必須アイテムとなった。かぶると自然と気合が入り、集中力が高まる。

20年からはピンクの帽子をかぶり、青い帽子は今も大切に保管する。かねて「『いつでも見守っててね』という感じで(レースで)必ず持ち歩くようにしています」と明かしていた。

この日、自身初の五輪決勝のレース中に、オフィシャルの白の帽子を脱ぎ捨てた。大切にするアイテムを手放し、気持ちを高めた。

「最後まで諦めない気持ちで帽子を捨てました。『ここからだ』っていうのを、自分でかみしめて走りました」

あらゆる力を走りに注ぎ込み、16年ぶりの景色を見た。