アゲアゲの最年長マー君が、若侍を引っ張る。田中将大投手(32)が19日、仙台市内の楽天生命パークで一般非公開で始まった東京五輪前の侍ジャパン強化合宿に合流した。新型コロナウイルスワクチン接種による副反応の影響で球宴を2戦とも欠場したが、体調は万全を強調。千賀、森下、平良ら後輩投手陣と積極的に交流し、主に若手が担う荷物持ちにも名乗りを上げた。最年少19歳で出場した北京大会から立場は変わった。チームリーダーとしてチームの一体感づくりへ奔走する。

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田中将が声のトーンを一段上げた。「大丈夫です! 元気です!」「教えられる会話なんてないですよ…内緒です!(笑い)」。侍ジャパン合流初日から体を動かし「実戦は今週末なので問題ない」と万全を強調した。13年WBC以来、8年ぶりの侍ユニホームには「デザインが変わって、初めて着た気持ちですね…そういうことじゃない?」と笑いを誘いつつ「ものすごくうれしい。ただ、思い出作りに着ているわけじゃない」と引き締めた。

立場が一変した。08年北京五輪はチーム最年少の19歳で出場。今回は坂本、柳田、大野とともにメンバー最年長の32歳で挑む。「時の流れを感じます。雲泥の差ですよね」。通例若手が担う雑務も率先して行う姿勢。「荷物運びにしても人手が限られてくる。最年長とかじゃなくて気づいたらやりたい」と、平均26歳の投手陣の垣根を取っ払う。

ウオーミングアップ後にいち早くベンチへ戻り、千賀とともに、いち早くキャッチボールをスタート。近距離で千賀の変化球を受ける際には「怖い! 怖い!」と大声でおどけた。「まだ、お互い探り合っている感じ。一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、いいチームになっていく」。空気を和らげるハイテンションな言動は、09年WBCの合宿初日で奔走したイチローにも重なる。稲葉監督も「オリンピックとはどういう戦いか知っていると思う。いろんなことを若い選手に伝えていってほしい」と積極姿勢を後押しする。

田中はミズノ社製のNPB球と異なるSSK社製の大会球にも「日本とメジャーでどっちが近いかと言えば、断然日本」と意に介さない。開幕戦となる28日の1次リーグ・ドミニカ共和国戦の先発は山本が決定的。田中は2戦目の31日メキシコ戦の先発候補だが、森下の抜てきも浮上しており、状態次第では決勝トーナメントが始まる3戦目になりそうだ。ワクチンの副反応による倦怠(けんたい)感もすっかり抜けた。心地よい高揚感だけを覚えながら、態勢を整える。【桑原幹久】