左胸の日の丸に、そっと右手を当てた。メダル確定を狙う準決勝の先発を託された侍JAPAN山本由伸投手は6回途中5安打2失点(自責1)と試合を作った。球数94球で9奪三振。5回まで無失点投球を続けたが、6回に今大会12イニング目で初失点を喫した。

「最後(6回)にリードを守り切れなかったのは残念ですが、勝ち越しを信じて応援します」

重圧のかかる国際大会でも、冷静なマウンドさばきを見せた。今大会ここまで4試合で46安打30得点、4戦中3度で初回得点と勢いに乗る韓国打線。初回1死二、三塁のピンチを迎えても落ち着いていた。センター後方の5つの輪を見て、ニコリと笑う。一呼吸置き、ふぅっと息を吐いた。平常心を保った。4番梁義智をフォーク、5番金賢洙を外角直球で連続空振り三振に仕留め、跳びはねた。

世界に挑む、今夏23歳。「運が良いんです。偶然の連続が、今の僕なんです」。日本を代表する投手になっても「本当に紙一重の繰り返し。好きなことに夢中になっただけ。勉強は…ね。野球しか頑張れたことがないんです」。世間的には大卒1年目と同学年で“新卒”だが「多分、野球がダメだったらニートですよ…」と真顔で言い、数秒後に大笑いする。

極めるまで、とことん突き詰める。コロナ禍の「おうち時間」で、自室で夢中になったのは韓流ドラマ。好きな俳優は「梨泰院クラス」や「サム、マイウェイ」の主演パク・ソジュン。「あの人が出ているドラマは楽しい」と目を輝かせ、オリックスでバッテリーを組む伏見と深掘りした。

2回に登板する際には、稲葉監督が審判にマウンド整備を要求。定まらない着地足に、グラウンドキーパーの協力も得た。「全員で、金メダルを」。降板後はベンチで戦況を見つめ、声を張った。7日の決勝戦に向けて、最善を尽くした。【真柴健】

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