東京五輪聖火リレーの東京都10日目は18日、東京都中央卸売市場足立市場で点火セレモニーが行われ、女子ボクシング界の次世代ヒロイン候補、及川美来さん(15)がトーチを力強く握った。「聖火リレーでオリンピックに携われてうれしい。将来はパリ五輪で金メダリストになりたい」。3年後の目標は明確。まずは聖火リレーで使用した桜ゴールド色のトーチを、一昨年に亡くなった祖父西田日吉さん(享年81)の墓前で披露し、購入金を出してくれた祖父母にプレゼントするつもりだ。

体操や水泳などのスポーツをしていた小4時、ボクシング経験者の父喜彦さんのひと言が競技開始のきっかけだった。「私、いじめられっ子だったんです。父が『やられっぱなしでいいのか?』って言ってくれた。痛かったので、最初はよけられるようになればいいなと。金メダルをとって、いじめ撲滅なども発信もしたい」。競技開始から約1年後の小5で小学生王者に。中2ではジュニア王座とジュニアチャンピオンズリーグを制覇後、統一王座決定戦でも勝利し、世代日本一の座を継続中だ。昨年からはコロナの影響により相次ぐ大会中止。今秋に検討されている全国大会再開を期待し、練習している。

現在は駿台学園高ボクシング部に所属しながら、元世界王者レパード玉熊氏(57)や、漫画「はじめの一歩」のモデルにもなった元日本王者高橋ナオト氏(53)の指導を受けて実力を磨いている。「玉熊会長からは『強い人は優しい』ことを学んでいます」。さらに高橋氏に1つの助言を受けたことも成長の糧となっている。いじめられたこともあった3学年上の高橋ボクシングジムの先輩。「でも、強かったので、私は憧れていた気持ちもあったんです」。その姿に、高橋氏からは「憧れていちゃダメ。一流にはなれないぞ。勝とうと思え」の言葉をもらった。目が覚めた気がした。「対戦することがあれば倒さないといけない。残念なことに、3つ差なのでまだ戦えていない。でも金メダルを目指すきっかけの1つです」。挑むものも、はっきり見えてきた。

東京五輪では高校の先輩でもある森脇唯人(25)が男子ミドル級に出場。大きな刺激を受けている。及川さんと同じ女子フライ級(51キロ以下)では並木月海(22)が出場権獲得。パリ切符を得るには、この数年で超えなくてはいけない相手でもある。「最初は夢のまた夢だったのですが、今はオリンピックに手が届くところに来てはいると思う」。玉熊氏から伝授されているパンチ連打などの技術だけでなく、人間性や気持ちの強さも成長中だ。【鎌田直秀】

 

◆18日の聖火リレー 東京都10日目も、点火セレモニーのみ行った。板橋区観光大使を務める俳優の杉浦太陽、競泳で12年ロンドン五輪女子400メートルメドレーリレー銅メダルの加藤ゆかさん、トーチエンブレムを手掛けた金属彫刻師の佐藤英夫さんらが火をつないだ。19日は荒川区で開催。60年ローマ五輪で女子100メートル背泳ぎ銅メダリストの竹宇治聡子さん(旧姓田中)、98年長野五輪スピードスケート男子500メートル金の清水宏保さん、東大卒クイズ王の伊沢拓司らが登場する。