男子個人総合決勝で橋本大輝(19=順大)が6種目合計88・465点で初優勝を飾った。92年バルセロナ・オリンピック(五輪)覇者のビタリー・シェルボを超える五輪史上最年少での優勝で、日本人としては5人目。ロンドン、リオデジャネイロ五輪と2連覇していた内村航平も成し遂げられなかった10代での世界王者となった。

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橋本が体操を始めたきっかけは兄だった。長男拓弥さんが佐原ジュニアに入り、続いて次男健吾さんと一緒に入会した。兄の付き添いで体操を見ていた大輝は、「やりたい、やりたい」と騒いだが、山岸監督からは「おむつが取れたら」と断られていた。

ただ、器具では遊びまくっていた。跳馬を走る兄の前を横切ったり、物おじしないのは昔から。「しょうがねえなあ」と次男と同時に、練習を許された。待ちに待った体操だった。

3人兄弟。ケンカは日常茶飯事。健吾さんは「ケンカしにきてましたね(笑い)。そのたびに山岸先生に止められて、3人そろって倒立させられて。週3、それです。『足先伸ばせ、つま先伸ばせ』と、いつも。壁倒立を1時間とか」と懐かしむ。祖父母の送り迎えの車中では「あんなの簡単にできるよ」と挑発する大輝が発端で小競り合い。よく泣かされていた。

強気はいまも変わらない。大胆な物言いも魅力だが、拓弥さんは「いまは有言実行してるから、ビッグマウスではないですね」と笑う。5月にNHK杯前には珍しく「優勝するから見に来て」と長野に呼ばれたという。「昔から面影はあったけど、いまは本当にすごいですね」と頼もしい弟を思いやっていた。