「ホッケー人生の中で一番お世話になった人。恩返ししたい」。ホッケー女子の瀬川真帆(25)がそう話すのは、高校時代の顧問佐々木正人さん(54)のことだ。高校卒業を機にホッケーをやめようとしていた瀬川は、佐々木さんの「俺のために東京五輪に出てくれよ」との言葉で競技続行を決意した。

ホッケー女子は7月31日に行われた最終スペイン戦に敗れ5連敗となり、今大会で勝利を得ることはできなかった。瀬川の武器はスピードと的確な状況判断。岩手県岩手町の沼宮内高校時代は、60~70メートルをドリブルで駆け上がり、シュートを決めることもあったという。グラウンドを縦横無尽に走る姿から、ついた異名は「忍者」。佐々木さんは「1対1の駆け引きも上手で、気遣いもできた」と振り返る。14年、部員10人だけの中、他の部員ら3人を助っ人に挑んだインターハイで優勝した。

大学からのオファーがあり、佐々木さんが進路を聞くと「満足したからホッケーはやめたい」と意外な答えが返ってきた。インターハイ優勝を目指した高校生活だった瀬川に別の目標が必要だと思った佐々木さんは「俺のために東京五輪に出てくれ」と説得した。既に東京開催が決まっており、年齢的にも東京五輪を目指すのが最適だと思った。

言葉通りに出場を果たし、戦いきった瀬川。佐々木さんは「いい形で仕事ができていた。しっかり休んで、さらにチャレンジしてほしい」とねぎらった。