スノーボードの男子ハーフパイプで冬季五輪2大会連続銀メダルの平野歩夢(22=TOKIOインカラミ)が、日本勢で5人しかいない夏冬両五輪出場を成し遂げた。日本男子では陸上とボブスレーで達成した青戸慎司に続いて2人目。パーク男子予選に日本勢で1人だけの出場。62・03点の14位で上位8人による決勝進出は逃したが、確かな足跡を残し“二刀流”挑戦にひと区切り。次は、約半年後の北京冬季五輪を目指すと宣言した。

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コンクリートの舞台で、滑り終えた平野の声は弾んでいた。悩み、模索しながら打ち込んできたスケートボード。ここまで、大会に参加してもなかなか思うようなパフォーマンスができなかった。東京五輪の舞台でようやく納得する演技ができた。「楽しく、自分の滑りができた。悔いはない」と感慨深げだった。

2回目の試技で、スノーボードで培った持ち味の高いエアを見せた。空中でボードを1回転させるフリップインディ、終盤には、空中で時計回りに1回転半する大技、540にも成功。45秒の演技をノーミスで終えた。逆転での決勝進出を狙って攻めた3回目は、障害物でのターンに失敗。歴史に残る“二刀流”の挑戦は幕を閉じた。

18年11月。4歳の頃から慣れ親しんできたスケートボードで東京五輪を目指すことを宣言。「正式種目になったのでスルーするわけにはいかない」と力強く語った。その後の五輪予選を兼ねた国際大会で日本勢トップを維持し、念願の五輪出場権を獲得した。順調に歩みを進めているように見えたが、本人の思いは違った。

「誰もやってないことは、こんなに大変なんだと実感していた時期もありました」と本音を吐露。雪上では五輪2大会連続銀メダルと輝かしい実績を誇る一方、陸上では、上位に食い込むことができなかった。技の構成などを踏まえると東京五輪は決勝進出がやっとのラインだった。五輪予選ランキングは25位。だからこそ「勝ち負け以上に、自分がどこまでできるのか試す気持ちが大きい」と臨んだ。そんな舞台で納得できる滑りが見せられた。「スケートボードが今の自分を強くしてくれた」と自然と感謝の言葉が出た。

“二刀流”の挑戦はひとまず終え、来年2月の北京五輪へ、冬の準備を急ぐ。同一シーズンの夏冬五輪出場はさらなる偉業。「半年でどれだけできるか。終わっても、挑戦は終わってない」。22歳は、信じる道、わが道を突き進む。【平山連】