日本代表MF久保建英(20=レアル・マドリード)が、縁深いスペインとの強化試合で輝きを放った。得意のドリブル突破から、MF堂安律(23)のゴールをアシスト。数字に残る結果を残し、格上と互角以上に渡り合うシーンも見せた。試合後に「てっぺんまで突っ走っていきたい」と語気を強めるなど、金メダル獲得へ自信を深めた。

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常にひょうひょうとした20歳が、珍しく気持ちの高ぶりを言葉にした。

久保 こうして強豪国と十分に渡り合えると、結果で示せたと思う。ここから時間は短いけれど、さらにいろんなところを修正して、てっぺんまで突っ走っていきたい。

めったに口にしない「優勝」の2文字を、てっぺんという言葉で発した。それだけ手応えのあるドリブルだった。前半42分、左サイドからDFをなぎ倒すようにドリブル突破した。視野の端に、ニアサイドのスペースを捉える。そこに堂安がきていることも感じ取っていた。「難しい時間が続く中、自分のところでこじ開けられないかと思っていた。いい形で抜けられて、あとは堂安選手のシュートが素晴らしかった」。会心の先制点。こめかみに血管が浮き出るほどの興奮でほえた。

「相手の選手に対してどうこう言うつもりはない」。そう言って臨んだ。いざピッチに立てば、ハーフラインの向こうに昨季ビリャレアルで共闘したDFトーレスがいる。ベンチにはヘタフェ時代の戦友DFククレリャ、バルセロナ下部組織時代の同僚DFガルシアの顔が見える。負けず嫌いの男から、普段は胸にしまわれている闘志があふれ出た。

10歳でバルサ下部組織に入り、帰国まで約3年半。そして現在は昨季までにスペイン1部で2シーズン、3クラブでのプレーを経験。スペインで育てられ、もまれた。「(成長の)スピードは離された気もする」と、弱肉強食の世界に身を置いて感じることも口にしていた。だからこそ、結果で力を証明したことで感情が爆発した。

引き分けにも「6月から負けずに本番に入れるのは、ポジティブにとらえていい」と前向きに話した。本大会でスペインと再戦するのは、最速で準決勝になる。次は勝ち、そのまま頂点まで駆け抜ける-。20歳の視線の先に、たしかな道筋が見えた。【岡崎悠利】