日本が68年メキシコ五輪以来のメダル獲得へ、MF久保建英(20=レアル・マドリード)の“最速弾”で8強進出に王手をかけた。12年ロンドン五輪金のメキシコに2-1で勝利。前半6分に久保が得意の左足で技ありの先制点を決めた。開始6分での得点は日本男子の五輪史上最速弾で初戦から2戦連発。28日フランス戦で引き分け以上なら強豪ひしめく1次リーグA組首位突破、準々決勝進出が決まる。

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日本のエースがいよいよ止まらない。開始わずか6分。右サイドをMF堂安が抜け出すと、トップギアでゴール前に走り込んだ。低く速い折り返しに左足のアウトサイドで合わせる高度なシュートで、世界的GKオチョアが守るメキシコのゴールネットを揺らした。「自分ならこうしてほしいと思うプレーをしている。波長が同じ」と信頼する堂安と見せたあうんの呼吸だった。

1つゴールが生まれると波に乗る男だ。東京時代の19年シーズン。開幕から10試合ゴールがなかったが、第11節磐田戦で初得点を記録したところから目が覚めたように4戦4発。そのままA代表デビューそして、Rマドリード移籍と一気に階段を駆け上がった。久保も「入るときは入る。それを自分で証明できている」とゴールが自分を波に乗せることを理解している。

チャンスメーカーの印象が強い20歳は元来、生粋の点取り屋だ。幼稚園時代、小学1年生の大会に年齢を内緒にして出たことがあった。5対5の試合で年上を相手に、10分間で10得点した。ゴールを決めては自らボールをセンターサークルに持ち帰る。そんな光景が繰り返されるうちに、相手GKが嫌になって泣きだした。常に「自分が決めなくても誰かが決めて勝てればいい」とチームの勝利が最優先。しかしここぞとなれば、得意の左足を振り抜く準備はできている。

鮮やかな先制弾で勢いに乗ったチームは12分にも追加点を奪い、試合の流れを掌握した。「いい意味で世界を驚かせる大会にしたい。今まで興味を持ってこなかった人にも、結果内容ともに明白な違いを見せたい」と意気込む20歳がまずひとつ、有言実行の勝利。試合終了の笛を聞くと、左の拳を力強くにぎった。【岡崎悠利】

▼日本の五輪最速ゴール MF久保が前半6分に先制点。日本の五輪本大会での最速ゴール記録となった。従来の記録は前半9分で、16年リオデジャネイロ五輪の1次リーグ・ナイジェリア戦でFW興梠慎三がPKでマーク。五輪史上の最速ゴールはブラジルのFWネイマールが16年リオデジャネイロ五輪の準決勝ホンジュラス戦で記録した15秒。