水谷隼(32=木下グループ)、伊藤美誠(20=スターツ)組の日本が、世界王者の許■、劉詩〓組の中国を4-3で破り、日本卓球界初の五輪金メダルを獲得した。

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水谷のフルスイングが流れを変えた。勝ったことがない相手に浮足立って、第1、2ゲームは落としたが第3ゲームで水谷にスイッチが入った。普段はフルスイングせず相手に合わせるディフェンシブな水谷が、なりふり構わず攻めていった。ちょうど最終第7ゲームで2-9から大逆転したドイツ戦と同じ。ゾーンに入った。触発される形で伊藤も動きが良くなった。

こうなると相手もプレッシャーを感じる。印象的だったのは試合終盤、ベンチで伊藤が「(中国男子選手の)許■がビビっている」と話していたこと。実際に許■は動きも精度も落ちていた。何よりも、格上と思っていた相手をのみ込む精神状態になると、一段と動きが良くなるもの。実際に伊藤は第3ゲーム以降、別人のように動きも良く、何より攻撃的にプレーした。

観客はいなかったが、それは表面的なもの。東京五輪ということで、いつも以上に応援してもらえている実感があった。確実にホームの優位性はあった。混合ダブルスは、五輪初採用の種目だが、男女とも世界トップレベルの実力が必要。それがあるのは今、日本と中国だけ。その意味では今後も、日本が金メダルを取り続ける可能性もある。とにかく快挙の一言だ。(日本卓球協会強化本部長)

※■は日ヘンに斤、〓は雨カンムリに文の旧字体