
【六十の手習い/囲み取材編】385日ぶりの奥川恭伸に遭遇 直感信じて席を立つと…
田村藤夫氏(63)の「プレミアムリポート」は、新しいフェーズに入った取材風景を、前回のDeNA松尾捕手への「初めてのぶら下がり取材」に続き、第2弾をお届けします。松尾捕手への直撃取材はぎこちなさの残る生々しさがありました。苦いぶら下がりデビューとなった田村氏ですが、そこはめげずに、今回はヤクルトの高卒4年目・奥川恭伸投手(22=星稜)の復活登板にスポットを当てました。
プロ野球
◆奥川恭伸(おくがわ・やすのぶ)2001年(平13)4月16日生まれ、石川県出身。小2年から宇ノ気ブルーサンダーで野球を始め、宇ノ気中では軟式野球で全国優勝。星稜では1年春からベンチ入りし、4季連続の甲子園出場を果たした。19年ドラフト1位でヤクルトへ。21年に9勝と台頭し、日本シリーズ初戦に先発。オリックス山本と緊迫した投手戦を展開した。22年に右肘を痛め、再起を図っている。好きな言葉は「置かれた場所で咲きなさい」。趣味は釣り。家族は両親と兄。183センチ、84キロ。右投げ右打ち。
◆田村藤夫(たむら・ふじお)1959年(昭34)10月24日、千葉・習志野出身。関東第一から77年のドラフト6位で日本ハム入団。93年に初のベストナイン、ゴールデングラブ賞を受賞。93年オフ、巨人長嶋監督からFA移籍でのラブコールを受けたが、日本ハムに残留。96年オフには、ダイエー(現ソフトバンク)王監督から直接電話を受け、移籍を決断した。07年からは、中日の落合監督に請われ入閣。捕手としてONと落合氏から高く評価されたが、本人は「自分から人に話すことではない」とのスタンスをかたくなに守る。42年間のプロ野球生活を経て解説者に。通算1552試合出場、1123安打、110本塁打。@tamu2272
▼田村藤夫のプレミアムリポート▼
外角キッチリ、強い151キロ
このところ、たまたま足を運んだファームの試合で、思いがけない場面に何度も出くわしている。雨予報で日程をずらして見に行った4月16日は、DeNAの大物外国人投手バウアーの初登板にあたった。その前の5日は今永が登板し、巨人ドラフト1位浅野との対戦だった。
こうしてファームを見に来ると、いいこともあるんだなと思っていたら、ヤクルトのファーム取材で訪れた戸田では、さらに驚く展開に。
先発投手を聞いて、「エッ!」と思った。奥川だった。ロッテの高卒ルーキー金田はどんな感じでやっているのかなと、そこを狙おうと思ってきたが、まさか385日ぶりの実戦登板…奥川とは思ってもみなかった。
私はバックネット裏のスペースで、各球団の編成担当と見ていた。奥川の初球はトラックマン計測では151キロ。先頭打者ロッテ勝又へ、アウトコースにきっちり制球していた。いきなりの初球が151キロ。それも、ベース板でも力強い、いいボールだった。
久しぶりの登板で、手探りのピッチングなのかなと、勝手に想像していた。編成担当との雑談の中でも、球速は130キロ台では、との話題も出ていたので、何の予備知識もない私は、いきなりの快速球に、軽く度肝を抜かれた。
そうそうは…偽らざる本音
マウンドの奥川は興奮する様子もない。私がこれまで西都2軍キャンプの室内練習場での遠投や、戸田のブルペンで見た時と同じように、穏やかな顔だった。しかし最後、9球を投げ、3者凡退に打ち取ると、笑顔になった。そりゃそうだろうと、私も思った。
久しぶりの登板で、1イニングだけであっても、あれだけの真っすぐを投げ、変化球も試せた。これは何よりの前進だろう。
打者に対して力を込めて投げられれば、後は登板翌日の肘の具合を確認していけば、徐々にとはいえ、1軍復活への道は見えてくる。そのための長いリハビリだったのだから、この笑顔は自然だった。
と、ここで「ぶら下がり取材」を経験してきたことが、ふっと頭をよぎった。
松尾君には気まずい思いをさせたかもしれないが、こちらもかなりハラハラした。正直、私の担当者は「諸条件が整って、チャンスあれば、どんどんぶら下がりで若手選手に話を聞いてください」と、ガンガン要求してくる。しかし、そうそう行く気持ちにもなれないのも、偽らざる本音だ。
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1959年(昭34)10月24日、千葉・習志野出身。
関東第一から77年のドラフト6位で日本ハム入団。93年に初のベストナイン、ゴールデングラブ賞を受賞。
93年オフ、巨人長嶋監督からFA移籍でのラブコールを受け(日本ハムに残留)、96年オフには、当時の王監督(現会長)から直接電話でダイエー(現ソフトバンク)移籍を決断。07年から中日落合監督に請われて入閣した。
ONと落合氏から高く評価された捕手だが、田村氏はそうした経緯について「自分から人に話すことではない」というスタンスをかたくなに守る。42年間のプロ野球生活を経て解説者に。プロ通算1552試合出場、1123安打、110本塁打。
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