1年遅れで開催されている欧州選手権(ユーロ)を見ながら寝不足の方も多くいると思います。改めてファンで埋まったスタジアムを目にすると、その光景は懐かしさもあり、うらやましさも感じます。

そのような中、レアル・マドリードのフロレンティーノ・ペレス会長がメディアに出てくるケースが特に今年は増えたように感じます。発言を聞くと、チーム運営の難しさや厳しさといったコメントが多く、中でも選手の移籍・退団に絡んだ現場のチームづくりに関する部分では「感情」と「ビジネス」の相反するベクトルをどうバランス良く収めるかという部分にフォーカスされているように捉えられます。コロナで売上が大きく減ってしまったところでの、首脳陣の葛藤を垣間見た気がします。

そのような中、先日ラ・リーガのテバス会長がオフィシャルにコメントを出していたのですが、現地の報道によると無観客での試合開催と、移籍市場の不活発化が主な原因で7億ユーロ(約840億円)を超える損失があり、その50%はバルセロナによるものだったということです。このコロナ禍においてレアル・マドリードのほうがバルセロナよりも経営面では上だったという趣旨の発言もなされており、改めてバルセロナの危機的状況が浮かび上がるコメントになったようです。

<2020-21シーズンのラ・リーガの総収入>

35億4500万ユーロ(約4254億円)

前シーズン対比:約30%マイナス

*損失:7億3300万ユーロ(約879億6000万円)

そのバルセロナですが、新会長のジョアン・ラポルタもバルセロナの財政面が想像以上に悪かったと発言しており、その主な原因はレアル・マドリードが約20年前に直面していた選手獲得の際の減価償却的な手法による不良債権のようです。選手獲得時のコストを5年、10年などで割ると、1年あたりでのコストとなり、その数字は小さくなる訳なのですが、これが、移籍によってクラブから選手が出ていったところでその移籍獲得金で相殺処理されていればまだ良いのですが、当然その移籍金は新たな入金と位置づけ、これを元に新たな選手を獲得してしまいます。すると、相殺されるべき部分が残りますので、これが積もりに積もってくると、多額な不良債権として残り続け、雪だるま方式にふくらんできます。レアル・マドリードもこの方式によって積み重なった債務に悩み続けていたところに現ペレス会長が赴任し、練習場を郊外に移したことによる売却益で相殺した過去があります。そしてレアル・マドリードは減価償却方式による選手獲得を辞めることとし、その1発目の大型移籍であったルイス・フィーゴは全て一括でバルセロナにお支払いしたと記録があります。

バルセロナは現時点で約6億5千万ユーロ(約870億円)近くの負債が有り、クラブの収入が1000億円前後になりますので、ほぼ同額レベルの負債が存在していることになります。同時にスーパースター、メッシとの新契約が未だ合意がなされていないことからすると、もしかしたら一気に解消できる術がメッシ売却ということで、水面下で動いているのかもしれません。

今のところはその予定はなさそうですが、どの様にこの多額の借金を返済していくのかが今後の争点になります。仮定の話ですが、ここ数年バルセロナがおこなっている若手有望株の売却によってこのマイナスを埋めていくということであれば、1990年代にピークを迎えた世界最高レベルの育成システムはもはや選手売却の為のシステムとなってしまったと言えるかもしれません。

そしてカルバハルやバスケスのように下部組織で育った選手がそのままトップチームで活躍するという好循環がレアル・マドリードに来ているとすれば、ネクスト・メッシはレアル・マドリードの下部組織で育ち、トップチームに昇格する選手から生まれるのかもしれません。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)