J3アスルクラロ沼津を率いる吉田謙監督(48)は、今年で就任4年目を迎えました。J3参戦初年度の昨季は3位。勝てば優勝の可能性があった栃木(現在はJ2)との最終節で引き分けましたが、堂々の結果を残しました。今季はリーグ制覇を目標に掲げ、開幕から2連勝(第3節相模原戦は降雪で中止)。昨年からベースとなっている堅守速攻に磨きをかけています。

 吉田監督は東京都出身で中学、高校時代は読売クラブの下部組織に在籍。その後、富士市に拠点を置き、JFLに参戦していたジヤトコなどでプレーしていました。98年に現役を引退すると、翌99年からアスルクラロ沼津の下部組織チームで指導者生活がスタート。13年まで主に中学生らを指導していました。

 モットーは「常に全力で戦う姿勢を植え付けること」です。練習から常に100%のプレーを求め、自身も手を抜かずに選手と真摯(しんし)に向き合う。居残り練習をする選手がいれば、必ず最後までグラウンドに残って指導をしています。

 「ひたむきに泥くさくプレーする姿が、見ている人に勇気や感動を与えると思っています。それは中学生でもプロでも同じです」

 今でも空いた時間を見つけて下部組織の練習に足を運び、選手を指導。Jクラブで指揮を執りながら、中学生らを直接指導する監督は希少です。「選手が成長していく姿を一番近くで見ていたい」。そんな思いを持ち続け、試合当日もスパイクを履き、ウオーミングアップでピッチに入ることもあります。その姿のままで90分間指揮を執っています。

 地域に根差して指導歴を重ねてきた吉田監督の夢は、静岡県東部地区で初のJクラブとなった沼津を、全国にアピールすることです。そして、クラブをJ2、J1に昇格させることです。現状ではJ2ライセンスがないため優勝しても昇格ができません。特に壁となっている「スタジアム改修問題」は、結果を残し続けながら、行政の動きを信じるしかない状況。それでも、あきらめていません。

 「沼津はまだまだ歴史が浅く、クラブの名前すら分からない人もいる。ただ、このクラブが沼津に必要だと思ってもらえるように頑張れば、必ず昇格できると思っています」

 熱血漢のもとで日々成長し、進化を続けるアスルクラロ沼津。吉田監督の今後の手腕にも注目します。


 ◆神谷亮磨(かみや・りょうま)1985年(昭60)8月28日、静岡市清水区生まれ。幼稚園からサッカーを始め、高校は東海大静岡翔洋(旧東海大一)に進学。08年入社。担当は11、12年に磐田、13、14年にアマチュアサッカー、15年から清水。現在は沼津や高校サッカーなどを担当し、4月から清水担当に復帰。