北海道コンサドーレ札幌MF白井康介(25)がブレーク中だ。ここ3試合連続で得点に絡み、レギュラー定着へ、アピールを続けている。地元テレビ局や雑誌などの取材が続いており、チームメートから「調子がいい人はやっぱり違うな」と、からかわれている姿を目にする。彼をもっと応援したくなるような、意外な一面を紹介したい。

その前に、まずは基本情報から。昨季J2愛媛から加入したサイドアタッカーで、ドリブルが武器。大阪桐蔭時代は「浪速のロッベン」と呼ばれていた。プロ野球の阪神・藤浪とは同期生だ。プロ7年目。昨季J1リーグ戦デビューし、2シーズン通算23試合2得点。今後の活躍が楽しみな選手だ。

今季2度目の先発だった7月7日松本戦(1△1)でシーズン初得点をマークして起用に応えると、続く同13日大分戦(1●2)では相手オウンゴールを誘うシュート、前節20日湘南戦(5○2)でも1アシストを記録した。古巣湘南との開幕戦ではベンチ入りを逃したが、シーズン後半戦に入って、存在感を増しつつある。

プレーもさることながら、魅力は見た目と性格の良い意味でのギャップだ。札幌加入時、金髪にヒゲで貫禄十分だった。だが話してみると、話し方も考え方も真面目でおとなしめ。風貌から勝手に描いていたイメージとは違った。聞けば「童顔だから、少しでも老けて見えるようにしている。すぐにしょんぼりするタイプだから、そう見えないように」と、明かしてくれた。

そんな落ち込みやすい性格が、成長を助けたに違いない。高校時代は監督から怒られれば、修正に全力を注いだ。クロスやシュートなど、その練習だけをひたすら続けた。気づけばいつも午後9時ごろにグラウンドを出発する最終バスに飛び乗っていたという。「練習しないと不安だった」と振り返る。

小説好きの読書家。最近の楽しみは2人の子どもと遊ぶことで、読書の時間は減ったようだが、「海辺のカフカ」を手にクラブハウスから登場した時に「村上春樹は不思議な世界です」と、感想を口にしていたことがある。その姿は、まさに文学少年だった。

次節3日広島戦での好プレーも期待してしまう。だが、本人は「危機感しかない。だから得点に絡み続けないと」と、慢心するどころか、危機感さえ漂わせる。これも、いかにも白井らしい。

主力を脅かす存在がいないと、切磋琢磨がなくなり、チームは強くならない。「非ポジティブ」だからこそ、努力を忘れない、欠かさない。白井のさらなる躍進を願っている。

◆保坂果那(ほさか・かな)1986年(昭61)10月31日、札幌市生まれ。13年から高校野球などアマチュアスポーツを担当し、16年11月からプロ野球日本ハム担当。17年12月から北海道コンサドーレ札幌担当。