ゴールへと突き進むギラギラとしたまなざし。ガンバ大阪MF堂安律(18)の一流技術は、意外な場所で生まれた。幼稚園から小学6年まで通ったサッカー塾。“教室”はテニスコートだった。そこで1つ1つに名前がついた100以上あるステップを体に覚え込ませた。小さなゴールが置かれると、そこは即席のサッカー場になる。狭いピッチでひしめき合う人をかき分け、ゴールに向かう練習を積んだ。教わったステップを使い分けると、自然とドリブルで相手を抜く技術が身についていった。

 サッカーを始めたのは3歳の時。8つ上の麿(まろ)さん、3つ上の憂(ゆう)さん(びわこ成蹊大サッカー部4年)と2人の兄が地元兵庫・尼崎市の浦風FCに通っていた。3兄弟の末っ子はいきなり非凡なセンスを見せる。股関節が硬く足が90度に開かないため幼い頃は難しいといわれるインサイドキックを、初めてボールに触った時から簡単にこなした。当時のコーチ、田村将行さん(62)は「最初からインサイドキックをできる子は見たことなかった」と驚いたという。

 磨いた技術と持ち合わせたセンスは、G大阪下部組織に進んでから輝きを増した。ユース所属だった高2で、16歳11カ月18日のクラブ史上最年少J1出場。昨年は優勝したU-19アジア選手権でMVPを獲得し、アジア年間最優秀ユース選手賞を手にした。次の目標は「U-20W杯優勝」と言い切る。世界の舞台で自慢の技と才能を披露する。【小杉舞】

 ◆堂安律(どうあん・りつ)1998年(平10)6月16日、兵庫・尼崎市生まれ。小学時代は浦風FCから西宮SSへ。中1からG大阪ジュニアユースで、12年に史上初のU-15世代の3冠達成に貢献。16歳11カ月11日で迎えたACL・FCソウル戦で公式戦デビュー。高3だった昨季トップに昇格し、夏にはオランダの名門PSVからオファーを受けた。J1通算13試合3得点。172センチ、70キロ。