新型コロナウイルス感染を公表し2日に退院した日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長(62)が、国際サッカー連盟(FIFA)に「レジェンドチャリティーマッチ」を将来的に提案したい考えを明かした。

新型コロナウイルス感染は世界各地で拡大し、経済界にも大ダメージを与えている。FIFA理事も務める田嶋会長は17日までに取材に応じ、終息後の話として、FIFAのレジェンドチームを結成して各国を巡ってチャリティー試合を行い、収益をその国に寄付する私案を披露した。

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200を超える国と地域が加盟する大所帯だからこそ、できる支援がある。田嶋会長は「今すぐできるような状況でないことは分かっている」と前置きした上で、胸に秘めた思いを明かした。「少し落ち着いたところでは、サッカーで助けていく、サッカーのチャリティーが一番ふさわしいと思っている。FIFAのレジェンドチームを結成し、世界中でチャリティーマッチの形でやってくれれば」と、世界ツアー規模のチャリティーマッチ計画を将来的にFIFAに提案したい意向を示した。

サッカーが持つ「力」を信じている。11年3月11日、東日本大震災で日本列島は傷つき、悲しみに暮れた。スポーツも軒並み中止となり、日本代表戦も例外ではなかった。そんな時に開催されたのが「東日本大震災 復興支援チャリティーマッチ『がんばろうニッポン!』」だった。

震災から18日後の3月29日、大阪・長居スタジアムで日本代表とJリーグ選抜の選手たちが、悲哀を胸に秘めピッチに立った。日本代表2点リードの後半37分。Jリーグ選抜として途中出場した横浜FCのFWカズ(三浦知良)がゴールネットを揺らし、万感の念を込めて「カズダンス」を踊った。喪章をつけて懸命なプレーを見せたサッカー人の姿に、人々は胸を躍らせ、希望の光を見た。

今、新型コロナウイルスでも多くの人々が苦しんでいる。自身も感染し、18日間の入院生活を送った。この病の脅威は、身をもって知る。疲弊しながらも懸命に働く医療従事者の姿を、病床で目の当たりにした。感謝の思いを、力になれることを、みんなで少しでも具現化できないか-。「東日本大震災で日本代表の試合ができなくてJリーグ選抜と試合をし、カズが点数を入れてくれたりして盛り上がった。新型コロナは世界中で起こっていることなので、全部を助けないといけない。日本サッカー協会だけの問題ではない。そういう試合を世界中いろんなところでやっていろんな国を変えていくことをしていかないといけないんじゃないか」。

Jリーグも日本代表戦も、現状では光明は差し込んでこない。今年の国際Aマッチ開催が見送られる可能性もある。だが悲観してばかりはいられない。「(元ブラジル代表MF)カカとか誰もが知っている選手が来て、日本もカズにしてもみんながやれるような。みんながその試合を見て、それがチャリティーになれば最高だと思います。ぜひやりたい」。JFA会長として、FIFA理事として、サッカーで世界にパワーを送る方法を模索し続ける。【浜本卓也】

◆東日本大震災復興支援チャリティーマッチ 11年3月29日、日本代表-Jリーグ選抜戦が大阪・長居で行われた。日本代表は前半15分、MF遠藤の右足FKで先制し、同19分にFW岡崎が加点した。Jリーグ選抜は後半37分、GK川口のロングフィードからDF闘莉王が頭でつなぎ、前線に走り込んだFWカズが右足でシュートを決めた。試合は日本代表が2-1で勝利した。試合の収益は主催した日本サッカー協会によると1億1349万8492円。義援金として日本赤十字社に1億1970万7176円が寄付された。

◆田嶋幸三(たしま・こうぞう)1957年(昭32)11月21日、熊本市生まれ。筑波大-古河電工で活躍し日本代表としても国際Aマッチ7試合1得点。引退後はU-17日本代表監督、日本協会の技術委員長などを歴任。国際サッカー連盟(FIFA)理事。