不幸中の幸いとは、まさにこのこと。日本サッカー協会(JFA)は1日、3日の国際親善試合・ジャマイカ戦(札幌ドーム)を中止すると発表した。ジャマイカの一部選手が、出発前の新型コロナウイルス検査などの影響で、来日便に搭乗できなかった。代わりに、A代表対東京五輪世代のU-24日本代表の開催が決定。A代表に専念予定だった森保一監督(52)は五輪世代を直接把握出来るだけでなく、選手にとってはアピールの場。何よりファンにとっては、夢のような「日の丸対決」が実現する。

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午前11時19分。ジャマイカ戦の中止がメール配信されると、その1時間後には「日本代表対U-24日本代表」の開催が発表された。カリブ海の強豪国との対戦が流れたアクシデントの中、日本代表、五輪日本代表にとっては多くのメリットが生まれる1日となる。両世代を兼務する森保監督にとっても、願ってもない時間となりそうだ。

(1)行脚 森保監督にとって、念願の同時視聴が可能。本来であれば、A代表は札幌-大阪-神戸-大阪、五輪世代は福岡-豊田での試合を予定していた。コロナ禍で森保監督はA代表に専念し、五輪世代の視察を断念していた。その中で“リモート”ではなく“現場”で確認できることは大きい。映像で見るのとは訳が違う。

(2)下克上 選手にとっては、絶好のアピールのチャンス。五輪世代は、結果次第でA代表入りも夢ではない。その1人、MF三好も「アピールのチャンスが増えるので歓迎している」。A代表の選手も同じことが言える。現状、五輪世代のオーバーエージ(OA)枠はDF酒井、吉田に加えMF遠藤。パフォーマンス次第では、そのシナリオを覆す構成が生まれるかもしれない? A代表のDF昌子も「もしかしたらすごくいいパフォーマンスしたらOA掛かるかもしれない。冗談ですけど」と笑った。

(3)経験値 五輪世代にとっては、1試合増える形となった。もともと予定していたのは5日のU-24ガーナ戦、12日ジャマイカ戦の2試合。そこに日本代表との一戦が組み込まれた。多くの選手を試せる運びとなった。同時に本番前の試行運転も可能。3日にA代表との試合をこなし、中1日で5日U-24ガーナ戦を迎える。五輪本番では中2日での試合が見込まれるため、戦略も立てられる。

(4)ドリームマッチ 何より、ファンにとっては夢の対決となるだろう。過去に「日本代表対U-24日本代表」のケースはない。無観客試合で行われる一戦。北の大地から、画面越しのサッカーファンへ-。サウサンプトン南野VSヘタフェ久保、ブレーメン大迫VSサンプドリア吉田、ボローニャ冨安…。日本で“欧州リーグ”のようなマッチアップをお届けする。

オンライン取材に対応したA代表4選手、五輪世代4選手全てが「本気の戦い」を求めた。ガチンコ勝負で繰り広げられる「日の丸対決」。そこには、ロマンが詰まっている。【栗田尚樹】