9月に開幕するサッカー、W杯アジア最終予選の日本のアウェーでの試合が、地上波から消えた-。映像配信サービスのDAZN(ダゾーン)は19日、アジア・サッカー連盟(AFC)との間で、2028年までの長期契約に合意したと発表。同日、テレビ朝日は、ホーム5試合のみ地上波独占生中継すると発表した。ホームは地上波、テレ朝で視聴できるが、アウェーはDAZNと契約して視聴することになる。

   ◇   ◇   ◇

解説 4年以上前から恐れられていたことが、現実となった。AFCと放映権契約を結んでいたテレビ朝日の新たな契約締結はならなかった。AFCとテレ朝の契約は16年前の05年までさかのぼる。それまでテレビ放映権はホームの国が持っていた。しかし放映権がビジネスになると判断したAFCは、05年からその権利を売り始めた。市場の大きい日本、韓国、中国がホームの放映権を主張して反対したが、他の40国以上のアジアの加盟国と地域は、AFCから最終予選のホーム補助金を3000万円出すとの提案をのんだ。

当時、地上波放映権をテレ朝が4年契約の90億円で買った。これにより、06年W杯ドイツ大会の予選からホームもアウェーも最終予選はテレ朝が地上波で独占して放送するようになった。4年契約は4度更新され、17年には4年180億円で契約を結んだ。しかしその契約が昨年で切れると、AFCが契約期間を8年と2倍にし、金額も1年換算で5倍以上となる2000億円に設定したことで、新たな契約は頓挫した。

結局、資金力のあるDAZNが、全放映権を獲得した。しかしテレ朝は意地とプライドを示し、今回、ホームの5試合を地上波で放送する。これはテレ朝とDAZNが結んだばら売り契約とみられ、1試合3~5億円で獲得したようだ。

しかし、なぜアウェー戦は契約できなかったのか。テレビ局は、莫大(ばくだい)な放映権料を支払う代わりに、キックオフ時間などで希望を伝えることができる。ホームなら、より視聴率の見込めるゴールデンタイムで放送できるため、CMが高く売れる。しかしアウェーは時差の関係で、キックオフが日本時間の深夜や早朝に設定されることがあるなど、CMが売れたとしても採算が合わなくなる。そのため、1試合3億円以上の巨額を払うのは難しくなった。

今回、幸いホームの試合は地上波で見ることができるが、今後W杯最終予選とアジア杯はテレビではなく、パソコンやスマホで見る時代へと変わる。日本サッカーは、そんなターニングポイントを迎えた。(金額は推定)【盧載鎭】

 

◆DAZNと日本代表戦 19年の南米選手権を初めて配信した。日本代表戦が地上波で中継されなかったのは、10年1月6日のアジア杯予選イエメン戦(サヌア)以来、9年半ぶりの出来事だった。