サッカーにも、少しずつ日常が戻ってきた。新型コロナ感染拡大後、初めて国内の日本代表戦が入場制限なしで行われた。
【W杯予選】吉田麻也同点弾も手痛いドロー 森保ジャパン7勝1分け2敗/ベトナム戦ライブ詳細>>
DF吉田麻也(33=サンプドリア)が、満員を切望した一戦。6万人には届かず、前半はB組最下位のベトナムに0-1とリードを許した。呼びかけた吉田こそ、後半にゴールを決めたものの、埼玉スタジアムに詰めかけたファン、サポーターから何度もため息がもれた。
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文字通り、人であふれ返った。埼玉高速鉄道「浦和美園」は、大混雑だった。地上のホームから2階の改札まで人だかり。近隣のコンビニは、店外まで行列が出来ていた。浦和美園までの電車は、全ての車両がパンパン。都内の朝の通勤ラッシュをほうふつとさせた。その影響で電車は遅延。あらゆる交通機関が、パニックに陥った。
人、人、人。皆が向かった先は、埼玉スタジアムだった。新型コロナ感染拡大後、初の入場制限なしで行われた国内の日本代表戦。日本のファン、サポーターのみならず、ベトナムを応援する人々で、スタジアムは熱気を帯びた。それは試合開始前から。ベトナムの国歌斉唱時には、多くのサポーターが声を出して熱唱。試合中も公式アナウンスが、何度も注意喚起するなど、ベトナムサポーターの声出し、チャント、指笛はボリュームを増すばかりだった。どれも禁止されている行為。ただ、そこには本来の日常の姿があった。
新型コロナウイルス対策のまん延防止等重点措置が解除。それを受けて、当初上限2万人だったベトナム戦のチケットが追加販売された。試合前には選手たちが250枚も自筆サイン入りのTシャツをサプライズプレゼント。6万人の満員にこそならなかったが、4万4600人の観衆で埋まった。
吉田は、試合前に「ぜひスタジアムに足を運んでもらえたら。僕らは最高のパフォーマンスでお返ししたい」と宣言した。だが、試合は開始から大苦戦。序盤からMF三笘を中心にチャンスを作ったが決めきれない。反対にピンチを招く場面も多くあった。前半19分、ベトナムの左CKから、ファーサイドでフリーになったDFグエン・タン・ビンにヘディングで決められた。
0-1で前半は終わる。場内はため息に包まれたが、後半9分、吉田がGKのはじいたボールを右足で蹴り込み、同点ゴールを決めた。「なかなかサポーターの前でプレーが出来なくて、選手は寂しく思っていた」。来てもらう以上、プロは結果で示す。しかし、奮闘むなしく、B組最下位ベトナムに勝利は逃した。吉田の意地が、約4万の観衆に対する唯一の救いだった。【栗田尚樹】

