世代交代は任せて下さい!

 日本協会は2日、来年の女子W杯カナダ大会の予選を兼ねたアジア杯(ベトナム、14日開幕)の女子日本代表メンバー23人を発表した。初選出の4人は、DF高畑志帆(24)、乗松瑠華(18)、MF猶本光(20)、FW吉良知夏(22)といずれも浦和レディース勢だ。現在なでしこリーグ5連勝中と勢いに乗り、佐々木則夫監督(55)も期待する新生たち。W杯2連覇へ向け、ここから長い道のりが始まる。

 世代交代が叫ばれるなでしこジャパンに、浦和の4人娘が名乗りを上げた。なでしこジャパンは、2011年の女子W杯ドイツ大会で初優勝した。15年カナダ大会も期待がかかるが、その鍵は新生たちが握る。

 筆頭は「澤2世」こと猶本だ。「下の選手が出ていかないと、女子サッカーの盛り上がりは続いていかない。頑張っていきたい」。そう自覚する20歳は、筑波大に通いながら、昨オフには男子の浦和FW原口とともにトレーニングに取り組んだ。今季から率いる吉田監督の指導の下、1週間ぶっ通しで走り込んだ。「練習場の柵のドアが開いていて、逃げ出したいと思いました」と話すが、鍛えた運動量が、ベテランには大きな脅威となる。佐々木監督も「自信をつけて一回りも二回りも大きくなってほしい」と話す。

 勤務する銀行で知らせを聞いた高畑は、同僚から花束を贈られた。「気が引き締まる思いです」。澤への憧れを胸に「ぜひコミュニケーションをとらせていただきたいと思っております」と、銀行員らしい丁寧な口調で、興奮を表現した。

 乗松はMF宮間のキック力に興味津々で「タイミングや、どこを見ているのか学びたい」と、日本女子サッカートップの技術に触れ、技を学ぼうとの意欲を見せた。また、左耳にサッカーボールのピアスを着け、おしゃれのワンポイントにこだわる吉良は「こんな大勢の方が来て、やっと実感してきました」と、約20人の報道陣を前に初々しくもさりげなく自分をアピールした。

 猶本は選出の感想を聞かれると「うれしいけど、まだ何も結果を残していない。勝負はこれからです」と、喜びよりも決意表明に力を込めた。W杯連覇へ、アジアでの予選を前に、チーム内は激しいレギュラー争いが予想される。旺盛な闘争心と、リーグ戦で勝ち続ける勢いを武器に、浦和の元気4人娘の挑戦は、ここからスタートする。【桑原亮】

 ◆乗松瑠華(のりまつ・るか)1996年(平8)1月30日、埼玉・上尾市生まれ。西上尾キッカーズスポーツ少年団でサッカーを始め、08年からJFAアカデミー福島に所属し、今季浦和に新加入。2月のラ・マンガ国際大会にも出場。164センチ、56キロ。

 ◆猶本光(なおもと・ひかる)1994年(平6)3月3日、福岡県小郡市生まれ。小郡東野少年SCでサッカーを始め、FCリエート、福岡ANサテライト、福岡AN。12年から浦和。10年U-17W杯、12年U-20W杯出場。筑波大在学中。家族は両親と兄、妹。157センチ、50キロ。血液型A。

 ◆吉良知夏(きら・ちなつ)1991年(平3)7月5日、大分、臼杵市生まれ。神村学園中等部から高等部に進学し、09年にU-17W杯に出場。ハットトリックも達成した。10年に浦和入りし、今季ここまで4試合2得点。161センチ55キロ。血液型O。

 ◆高畑志帆(こうはた・しほ)1989年(平元)11月12日、広島市生まれ。広島フジタSCレディースから藤枝順心高、早稲田大を経て、12年に浦和入り。センターバックで活躍し新人王。165センチ、55キロ。

 ◆女子アジア杯

 8カ国が2組に分かれ、上位5カ国がW杯出場権を得る。そのため日本はA組2位以上で1次リーグ突破し準決勝に進出した時点でW杯出場が決まる。3位でも、B組との5位決定戦に勝てば出場権を得る。高温多湿の気候で、1次Lは中1日の3連戦。初戦は前回王者で体格に勝るオーストラリア。ベトナム、ヨルダンは格下も、ヨルダンは日本協会から派遣された沖山雅彦監督(45)がおり、パスサッカーが急成長して侮れない。過去最多8度の優勝を誇る中国が最大のライバル。

 ◆前回W杯アジア予選VTR

 10年に中国で行われた。1次リーグA組の日本はミャンマー、タイ、北朝鮮に3連勝し、A組1位で通過。準決勝でオーストラリアに0-1で敗れたが、3位決定戦で2-0で地元中国を下し、6大会連続のW杯出場をつかんだ。