神戸弘陵(兵庫)がスーパーサブの決勝弾で、過去最高のベスト8に輝いた93年度(第72回)大会以来となる16強進出を決めた。東京都市大塩尻(長野)のロングボールなどに手を焼いたが1-0で勝利。後半26分に唯一1年生でベンチ入りした途中出場のMF竹村史明が試合を決めた。香芝(奈良)は各務原(岐阜)に敗れ、近畿勢は神戸弘陵だけが今日3日の3回戦に進んだ。

 後半26分。神戸弘陵の竹村は、味方FW土井が右サイドからゴールに迫るのを横目に、冷静に考えをめぐらせた。「DFのマークを外しつつ、土井君が自分でシュートを打ったこぼれ球でも、パスが来ても、どちらでも決められる位置取りを探しました」。

 シュートはGKにはじかれ、クロスバーをたたいたが、計算通りに竹村の目の前に。冷静に決めると、1年生らしい無垢(むく)な笑みが広がった。後半22分から起用した谷監督も「これまでも大事なところで決めてくれた。信頼しています」と采配的中を喜んだ。

 昨年7月5日に「初めて公式戦で使ってもらった」というプリンスリーグ関西の大産大付戦の後半ロスタイム、いきなりゴールを決めた。以来、こう着した展開、劣勢の展開の中でゴールを連発し、12月の同リーグ初制覇に貢献した。

 谷監督は「速さとうまさを兼ね備える選手はなかなかいない」と突破力も評価する。しかし本人はてんぐになるどころか、この日の取材対応でも先輩の目を気にして、時折消え入りそうな声になった。それがピッチに入れば、冷静な判断から迷いなくシュートを決める。重圧を感じる様子など、みじんもみせない。

 小学生時代、日本代表MF香川(現ドルトムント)が在籍したマリノFCでプレー。香川が古巣を訪れた際に1度会い「海外でも通用するドリブル、それから守備はすごい」と今もあこがれる。「アザールのような俊敏さで突破する選手になりたい。好きなのはレアル、いや、バルサかな」。欧州サッカーのことを語りだすと、先輩の目も気にならなくなった。【塩畑大輔】