国学院久我山(東京A)が青森山田を2-1で下し、出場7度目で初の決勝に進出した。東京勢の決勝進出は17大会ぶり。08年度に4強の壁に阻まれ、専属フィジカルコーチを招聘(しょうへい)するなど改革を実行。平日の2時間練習の半分をフィジカルトレーニングに充てた結果が、後半ロスタイムの決勝弾につながった。

 国学院久我山が新たな歴史を刻んだ。1-1で迎えた後半ロスタイム。DF宮原は中盤付近でボールを奪うと、鋭いカウンターを仕掛け前線へ。仲間も追随して駆け上がり相手陣内に一気に押し込む。CKを獲得すると、その流れからDF戸田の決勝弾が飛び出した。今大会初の逆転勝利に、就任1年目の清水恭孝監督(43)は「技術ではうちも負けていないと思っていた。粘り強くしたたかに戦ってくれた」と目を細めた。

 08年度大会はMF田辺草民(現東京)を擁し「久我山最強」と言われるも、前橋育英に0-1で敗れ4強進出を阻まれた。当たり負けて持ち味のパスワークを発揮できず、スコア以上の惨敗に終わった。平日2時間の限られた練習で何を変えるべきか-。部としてたどり着いた改革が、10年の三栖英揮フィジカルコーチ(36)の招聘だった。

 連日、1時間を体幹などのトレーニングに充て、食事のアドバイスや疲労回復法を伝授。連戦では同コーチが各選手の疲労度をデータで把握し、それぞれに合うメニューを渡した。長期離脱者は0。準決勝でも相手の大型DFに当たり負けせず、終盤にトップスピードを出す走力を発揮した。宮原は「間違いなく三栖コーチのおかげ。全員が90分足が止まらない自信があった」。身長167センチのMF名倉も「体のキレもあったし小さい僕でも相手に球際で負けなかった」と振り返った。

 相手はU-18プレミアリーグの最高峰に所属し、国学院久我山は東京都1部リーグ。Jで例えればJ3がJ1に勝った図式だ。名倉は「世の中の人は青森山田が勝つと思っていたと思う」と本心を明かし、総体で関東第一(東京)が4強に進出したことを挙げ「東京のレベルが高いことを示したかった」と意地を口にした。決勝の相手は総体覇者。短い練習時間で培った技術に加え、強い肉体と体力を手にした国学院久我山イレブンが、王者に挑む。【岩田千代巳】

 ◆東京勢の決勝進出 国学院久我山が初の決勝進出。東京勢の決勝進出は準優勝だった98年度の帝京以来、17大会ぶり史上11度目。優勝は91年度の帝京が最後で通算6度だが、いずれも帝京が達成している。決勝に進出した過去10度のうち帝京が9度、青山師が32年度大会に1度(準優勝)。