青森山田が58大会ぶり2度目の準決勝東北決戦を制した。GK飯田雅浩(3年)は、PK戦の「正座戦法」で尚志(福島)4人目DFフォファナ・マリック(3年)のシュートをストップ。後半42分に途中出場したFW小松慧(3年)の値千金同点弾を2大会ぶりの決勝進出につなげた。14日の決勝では2度目の頂点をかけて流通経大柏(千葉)と戦う。

青森山田GK飯田は“ルーティーン”を崩さなかった。尚志DFフォファナがボールをセットするのを横目に、ゴールの中で正座。目を閉じ五感を研ぎ澄ますと、立ち上がって両手を高く上げ、ゴールの前に君臨した。「自分から見て右に蹴るというデータがあったけど、我慢して先に飛ばないよう意識しました」。ギリギリまでコースを見定めて右に飛ぶと、両手でボールをはじき出した。青森山田5人目のDF藤原優大(1年)が決めて試合終了。冷静な判断でチームを勝利に導いた。

「正座戦法」を取り入れたのは、大会約1週間前。PK練習中に黒田監督から提案された。2年前の選手権優勝メンバーGK広末陸(現山口)がやっていたという儀式。「自分の体を小さく見せてから(立ち上がり)大きく見せる。相手が構えてから蹴るとペースを持って行かれるので、相手が置いてから自分が正座をして時間をつくって、自分のタイミングで始めるのを意識していました」。審判から「次やったらイエロー(カード)出すよ」と言われていたが、それでも自分のペースを貫いた。

大会直前の昨年12月上旬に黒田監督から指名され、札幌内定MF檀崎竜孔(3年)からキャプテンを引き継いだばかり。「お前の重圧は半分預かるから」と注目が集まる仲間のぶんまで責任を背負い、個人よりチームを優先して行動してきた。「檀崎のようにプレーで引っ張ることはできない」と、就任後は毎日練習前後に選手だけでミーティングをするなど、工夫を凝らしてチームをけん引。対立する仲間の間に入り“好セーブ”も見せるなど、意見を言い合える環境づくりでチームをまとめてきた。

東京Vジュニアユース出身で、同ユース昇格を辞退して青森山田に進学した。厳しい高体連の道に進んだのは自らの成長のためでもあったが、より「日本一」に近い環境だったから。目標まで、あと1勝だ。