青森山田が尚志(福島)との58大会ぶり2度目となった東北対決をPK戦の末に制し、2大会ぶりとなる決勝進出を決めた。2-3で迎えた後半42分、途中出場FW小松慧(けいと、3年)が起死回生の同点ゴール。PK戦では主将のGK飯田雅浩(3年)の好セーブで4-2と退けた。流通経大柏(千葉)は5-0で瀬戸内(広島)に大勝し、2年連続で決勝舞台に臨む。明日14日の決勝(埼玉スタジアム)では両校ともに2度目の優勝に挑む。

オレが山田の中山だ~! FW小松が、泥臭くても得点する元日本代表FW中山雅史(J3沼津)のような存在感を光らせた。ファーストタッチで相手クリアに猛チャージ。体で止めると、こぼれ球を諦めずに追い、飛び出したGKより先にチョンッと流し込んだ。「ゴールシーン覚えていないです。とにかくケネ(DF三国)が競り勝つのを信じて走っただけ。早く映像見たいですねえ」。トークにも「ゴン魂」が宿っていた。

自称「炎のストライカー」。51歳現役、Jリーグ157得点、日本代表21得点の英雄の姿に、小学生の頃から憧れてきた。「熱い魂をむきだしな姿勢が大好き」。中山のゴール映像を見るのが日課。98年に中山が樹立したJリーグ4試合連続ハットトリック(当時ギネス記録)を見ながら会場入り。「思いが形になりました」とニヤリ。

チームでは170人の部員をまとめる寮長役も担う“小松隊長”。選手間ではいじられ役でもあり、グチの聞き役でもある。「本当はゴール決めた時はスタンドのみんなのところに全力で走りたいんですけれど、今日は記憶が飛んだ。いつの間にか逆方向に走ってましたね」。ベンチ側のコーナーフラッグ近くで仲間の祝福。ロスタイムには縦パスに抜け出し、GKと1対1。「コースを狙ったつもりだったんですけれど…。あそこで決め切れないのが自分です」。逆転弾でのヒーローは逃したが「負けないのが魂です」と、してやったりの表情を見せた。

昨年度の選手権はゴン魂を見せすぎ、練習中に頭から突っ込み脳振とうを起こした。医師からの出場許可が出ず、埼玉・越谷市の実家で療養。「冬の雪中練習にも全く参加できず『お前はピッチに立つ資格ないだろ』と仲間も反骨心をあおってくれていました。食トレと筋トレしすぎてデブになって帰ってきたんですけどね」。昨年5月の誕生日には右足首の手術を受けるため入院するなど、ピッチに飢えていた。

思うようにいかなかったサッカー生活だったが、終わりよければすべて良し。「短い時間でも走り切って最後に笑います」。散髪も済ませ、お立ち台に上がる準備もできている。【鎌田直秀】

◆小松慧(こまつ・けいと)2000年(平12)5月12日、埼玉・越谷市生まれ。小5時に越谷サンシンサッカースポーツ少年団で競技を開始し、東京U-15深川では全国優勝も経験。175センチ、68キロ。50メートル6秒3。利き足は右。「炎のストライカー」の愛称は「ファイア」。得点後はスタンドから「ファイア」の声で祝福されることが恒例。家族は両親と兄、妹。血液型A。