第100回高校サッカー選手権で高川学園(山口)が、嵐を巻き起こしている。1回戦の対星稜(石川)でFKの際に中央で円陣を組み、グルグルと回転しながら先制点を奪取。スペイン語で「嵐」を意味する「トルメンタ」の動きは、SNS上で世界に拡散された。今話題の「トルメンタ」。誕生秘話は? レパートリーは? 潜入した。

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世界が目を“円く”する高川学園の奇策。1回戦の対星稜(石川)で、度肝を抜いた。右FKの際に中央の5人が手をつなぎ、円陣をつくって、フリーの選手が先制点。その模様がSNSなどで世界に発信され、話題を呼んだ。2回戦の対岡山学芸館(岡山)の決勝点は、アレンジを加えた。左FKから3人1組の輪を2つ形成。3回戦の対仙台育英(宮城)では5回のセットプレーのうち、円陣を組んだのは2回。後半ロスタイムのCKは、シンプルなセットプレーで決勝点。相手の想像の上を行き、14大会ぶりのベスト8進出を決めた。

始まりは、山口県大会前の学校の部室。部室前のボードには、磁石が無造作に張ってあった。何げなく目を留めたFW中山桂吾(3年)は「これならいけるんじゃないか」とうなずいた。磁石が、円の形をしていた。「円陣を組んでグルグルと回転すれば、セットプレーの時に相手もマークが付けない」。ふとした瞬間のアイデアだった。

もともとセットプレーで、得点は取れていた。奇策と呼べるものも何個かあった。全国で勝つため-。キャプテンのMF北健志郎(3年)は「無理でしょ」。江本監督も「何やっているんだろう」と首をかしげていたが、中山の案に引き込まれた。同校サッカー部には、農業部、おもてなし部など、選手全員が所属する11の部署がある。その1つの強化部を中心に、同監督らと議論を重ね“グルグル円陣”は完成。中山は「目は回りません」と笑った。

正式名称は、スペイン語で「嵐」を意味する「トルメンタ」という。選手が運営する同校サッカー部の公式ツイッターで公表された。3回戦では、4人が1列に並ぶ“新技”も披露。次はどんな横文字が来ると思ったら、中山は「これは普通に列車です」と笑った。

公式戦での初披露は、山口県大会の準決勝(対聖光)だった。セットプレーの際に「トルメンタ」から得点をマークした。中山は「反響はあまりなかったです」と笑うが、今や世界のサッカーファンが注目する。引き出しは数知らず。レパートリーの考案に、そこまで時間は要さないという。「まだまだありますよ。楽しみにしていて欲しいです」と不敵な笑みを浮かべた。4日は、14大会ぶりのベスト4を目指し、桐光学園(神奈川)と準々決勝を戦う。「トルメンタ」「列車」、その次は何だろう。【栗田尚樹】