上咽頭がんからの復活を目指す元フットサル日本代表のFP鈴村拓也(34=デウソン神戸)が、9月22日のFリーグ湘南戦(グリーンアリーナ神戸)での公式戦復帰に照準を定めた。17日、東京・文京区の日本協会を訪問。大仁邦弥会長(68)らに経過報告を行った。その席で、右上葉肺腺がんを公表した湘南FP久光重貴(32)が9月の湘南戦に来場予定であることを明言。「戦友」に勇気を与えるために、その一戦での完全復帰を目指すことを宣言した。

 真剣だった。がんとの闘病、絶望、苦しみ、そしてピッチに戻れた喜び。全てを知るからこそ、盟友に思いを伝えたかった。鈴村は「9月の湘南戦に出たいです。久光と約束したので。彼が体調を整えて会場に来て、僕はそのピッチに立ちたいです」と言い切った。

 久光からは9日に右上葉肺腺がんを公表する前日に電話を受けた。「最初は言葉が出なかった…。でも、久光は前向きだった。また同じピッチで試合しましょうと言ってくれたので。僕も仲間がいて治せたので、僕も彼をサポートしたい」。素直な感情を吐露した。

 昨年12月9日にがん発症を公表した後、つらく長い闘病を経験した。抗がん剤投与は5回、放射線治療は35回を数え、体重は12~13キロ落ちた。その間、篤子夫人が第2子の長男を出産。家族、周囲の仲間への思いが闘病生活を支えていた。6月27日の検査で転移がないと診断され、同28日に練習に合流。当初は公式戦復帰の目標を10月に定めた。「練習に合流したころは自然と笑っていた。でも、今は、もっとやれるという自分への欲求の方が強いですけど」。そんな思いを久光にもして欲しい-。だから、復帰時期を前倒しした。

 まだ、放射線治療などの影響でご飯が喉を通らず「医者には、これは一生のことだと言われています」。失われていた味覚も、ようやく少しずつ回復している途中だ。5年間は再発のリスクもある。その中で、練習メニューはリハビリ中心だが、完全合流への手応えは感じている。「彼への思いを背負うことは、僕のためにもなる。Fリーグにふさわしいレベルになって戻る。日本代表だって目指したい」。鈴村は今を全力で生きる。家族、そして友のために。【菅家大輔】

 ◆鈴村拓也(すずむら・たくや)1978年(昭53)9月13日、名古屋市生まれ。三重・四日市中央工で全国選手権出場。97年にJリーグ神戸入りも2年で戦力外となり、フットサル転向。08年からデウソン神戸所属。日本代表103試合38得点。175センチ、75キロ。