背水の陣となる日本は、スペインとどう戦うべきか? 14年W杯ブラジル大会優勝のドイツを支えた「チーム・ケルン」のゲームアナリストだった浜野裕樹氏(34)が、スペインを徹底分析した。直近2試合のコスタリカ戦(7-0)、ドイツ戦(1-1)から見えた攻略の糸口を、4つのポイントにまとめた。
(1)中盤の3選手を自由にしない
スペイン伝統の4-3-3のフォーメーションでは、中盤の3枚がカギを握っている。ここ2試合に出場したペドリ、ガビ、ブスケツはバルセロナでプレーしており、あうんの呼吸で試合をコントロールしていた。コスタリカは、一番低い位置でプレーするブスケツを自由にしたこと(前を向いてボールをプレーできる状況)で試合をコントロールされ、前半のうちに試合を決められた。この点では、ドイツは中盤でマンマーク気味に3対3の状況をつくり、スペインの3選手が前を向いてフリーでボールを持つ場面を極力少なくなるように試みた。日本の3戦目はメンバー変更があるかもしれないが、相手の攻撃を片方のサイドに追い込むことが重要になる。
(2)前から勇気を持ってプレスに行く時間をつくる
試合の状況によっては、自陣に引きながら相手の攻撃を「耐え切る」ことが必要になってくる。なぜならば90分を通じて前からプレッシングをかけ続けることは精神的かつ、体力的にも要求されることが大きいからだ。しかし状況によってはドイツがスペインに対して行ったように、後方は数的同数になったとしても、前線からプレッシャーをかける場面が必要になる。後方から丁寧にボールをつないでいくスペインのスタイルを逆手にとりたい。相手にボールが入った際、背後からファウルなしでボールを奪えれば大きなチャンスになることが期待される。
(3)前線で数的同数ができたらボールはスペースへグラウンダーでる
試合開始から日本のビルドアップに激しくプレッシングをかけてくることが予想される。場合によっては、日本のサイドバックにスペインのサイドバックが、日本の中盤の選手にスペインのセンターバックが、自陣から本来守るべきポジションを放棄して前にアタックしてくる。そうなった時に日本にとっては大きなチャンスが生まれてくる。
また、スペイン陣内で瞬間的に3対3となる場面がある。そうなれば広大なスペースがあり、ロングボールを使うことは有効。ただし待ち構えるスペイン選手は前への推進力を持ってアタックしてくるから、ロングボールは選手にめがけて出すのではなく、走り込めるスペースに出すようにすると効果的だろう。運が良ければ1対1で抜け出すことが期待できるし、ファウルをもらえれば相手に警告が出る可能性も高い。
(4)FK時の高い守備ラインを逆手に取る
ここまでの2戦をみると、コスタリカ、ドイツがスペイン陣内でFKをプレーする時に、スペインは何度か大胆な高いライン設定で守備を行っていた。ここにスペインを驚かせる可能性が詰まっている。選手をわざとオフサイドに位置取らせる。高いボールではなく、低いボールで相手が余裕を持って自陣ゴールに戻る時間をつくらせない。スペイン選手をブロックし、大外への展開から折り返してシュートするなど。1つのバリエーションを試合までに準備することは可能だろう。
真剣勝負でスペインと試合ができる機会が次にいつ来るかは分からない。どんな戦術/フォーメーションで戦い、どのような結果になったとしても、試合終了まで日本代表を心の底からドイツから応援したい。(UEFA・A級コーチ)
◆浜野裕樹(はまの・ゆうき)1988年(昭63)7月4日生まれ、横浜市出身。日体大-ケルン体育大。ドイツ代表をサポートする「チーム・ケルン」の一員として、14年W杯では対戦する可能性があるチームの試合を分析し、リポートした。ケルン在住で、現在は小学校教員の傍らフォルトゥナ・ケルンのU15ブンデスリーガ監督兼任。UEFA・A級ライセンスのコーチ資格を持つ。
▼29日の非公開練習では、選手同士で戦術面について激しく議論がかわされた。MF相馬は「今までの(開幕前の親善試合カナダ戦を含めて)3試合で、一番の議論」と説明。「絶対、倒します」と打倒スペインを誓った。GKシュミット・ダニエルは「闘志しかない。みんなの表情を見てもらえれば分かる」と一変した空気を強調した。