【ドーハ(カタール)4日】総力戦で目標の8強を実現する。決勝トーナメント1回戦クロアチア戦を前に、森保一監督(54)は、メンバー26人に主力もサブもないと明言した。就任して4年。選手を知り尽くし「全員が主力」といえるメンバーをそろえた。1次リーグでは絶妙な選手交代で、ドイツ、スペインから金星。クロアチア戦もこれまで同様の総力戦で、史上初のベスト8を決める。

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4年前の屈辱を晴らす時が来た。コーチとして臨んだ前回ロシア大会決勝トーナメント(T)1回戦のベルギー戦。後半ロスタイムの残り1分で逆転された「ロストフの悲劇」。森保監督はクロアチア戦の前日会見で「あの経験があったからこそ、生かしていこうとチームづくりをしてきた」と表情を引き締めた。監督になって4年。26人全員が主力といえるチームは完成の域に達しつつある。

全員サッカー-。そのイメージは野球だった。「ピッチャーでいえば、先発、中継ぎ、ストッパー。役割の違いで、チームが勝つために個々が機能していく」。幼少期、プロ野球選手に憧れた。長崎の実家にあるブラウン管のテレビで放送されるスポーツは、もっぱら巨人戦。弟の洋さんに「1000本ノックだ」とボールを打つほど大好きだった。「レギュラーとサブ組という考え方は持っていない」とチームを野球に重ねながら言った。

選手と話す際は「スターターとフィニッシャー」と表現する。交代枠が5人に増えたことを生かし、個々に明確な役割を与えた。前半は堅い守備を軸にし、後半は攻勢に転じる。ドイツ、スペインから得点したMF堂安はいずれも途中出場だった。「僕たちは11対11じゃなくて、26対11で戦っているという意識」と堂安。指揮官の思いは、選手にも届いている。

今年7月には、東京ドームを訪れ、親交のある巨人の原辰徳監督と対面した。WBCで世界一の指揮官になった原監督に、選手の成長をうれしそうに語った。「スペインもドイツも有数の選手がいるけれど、(日本の)選手たちは自信にみちあふれているから、逆に自信をもらっている。団結力を持てば、自然と結果がついてくる」。言葉通り、選手をまとめあげ、1次リーグでは、勝負師の采配で強豪2カ国を撃破。新たな歴史を刻むまであと1歩に迫った。

決勝Tから90分間で決着がつかない場合は前後半15分の延長がある。クロアチアは前回大会の決勝T1回戦から準決勝まで、すべて120分間の死闘を制して決勝まで進んだ。日本同様の粘り強さが身上だ。「日本人のメンタルと似てるなと思いながら見ている。W杯で見せてくれた戦いは参考にしている」。1次リーグとはまた違う難しい戦いになるが「理想と現実を持ちながら、最終的に試合をものにできる戦いをしたい」。試合巧者をねじ伏せ、新しい景色に到達する。【岡崎悠利】

○…森保監督はクロアチア戦の前日の公式会見に出席した。前回ロシア大会、決勝トーナメント1回戦でベルギーに敗れた「ロストフの悲劇」。あれから4年。「あの経験があったからこそ、生かしていこうとチームづくりをしてきた」と表情を引き締めながらリベンジを誓った。クロアチア戦については「チーム全体で試合をつないで、ものにすることをやっていきたい」と、ぶれない言葉を続けた。

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