[ 2014年2月19日9時2分

 紙面から ]公式練習を行う浅田。情感を込め、リンクを舞った(撮影・PNP)

 跳べ、真央!

 ソチ五輪フィギュアスケート女子は今日19日午後7時(日本時間20日午前0時)のショートプログラム(SP)で決戦が始まる。浅田真央(23=中京大)は銀メダルに終わった10年バンクーバー五輪から滑りを見直し、集大成の舞台に立つ。18日の最終調整では安定してトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功した。17日の会見では、初めて五輪でトリプルアクセルを跳んだ伊藤みどりさん(44)の名前を挙げた。その第一人者からエールが届いた。

 トリプルアクセル。世界のフィギュア界に名を刻んだ第一人者はその魅力を語りだした。

 伊藤さん

 アクセルは唯一前向きに滑るジャンプ。空気感、におい、風当たりが気持ちよかったりしている。それが魅力。好きですね。壁に向かって跳ぶので、勇気がいる。でも、風を正面に受けながら勢いよく向かっていく。それが良いじゃないですか。

 向かい風、恐怖心に打ち勝つように体を投げ出す。そこに価値を見る伊藤さんは、浅田へエールを送る。

 伊藤さん

 真央ちゃんはもっともっと、より理想を求めて挑戦していくのはアスリートとして必要な要素だと思う。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」よ。

 17日に五輪公園での会見で、浅田は尊敬する人として伊藤さんの名を挙げた。「五輪でトリプルアクセルを跳んだのを、自分も受け継いでいけたらいい。ソチ五輪でも跳べたらいい」。

 伊藤さん

 女子はトータル的な演技をみせる流れになってきている。技術、ジャンプ、表現力、柔軟性、あらゆるものが平均以上ないと話にならない。3回転半を絶対に跳ばないといけない採点法になってない。その中で、よく五輪に向け作り上げてきたなと感じます。女子ではやらないだけに、挑戦するのは価値、意義のあること。正確に跳んでいくのは難しい。それでこそ、より価値のあるものです。

 そこに気概を感じる。

 伊藤さん

 ずいぶん、力強くなったし、スピード感ある中で跳べるようになった。前は真央ちゃんなりのタイミングで跳んでいた。いまはスピードに乗りつつ、うまく力に変えている。

 浅田は全日本選手権後、フリーでの3回転半の本数を2本から1本に減らし、全6種類のジャンプを入れる決断をした。

 伊藤さん

 悔いが残らないようにするのが正解だと思います。悔いのないプログラムの選択の仕方をしてもらえたらいいな。個人的には、6種類からのバリエーションのほうが面白いと思うんですよね。

 初めて会ったのは浅田が幼稚園の頃だった。

 伊藤さん

 県大会で見て華がありましたね。子供の中でぐちゃぐちゃやっているけど、目を引いた。

 その少女はいま、五輪の舞台で、3回転半の継承者になろうとしている。向かい風、その中を躍動感あふれるジャンプで跳ぶ。

 ◆伊藤(いとう)みどり

 1969年(昭44)8月13日、名古屋市生まれ。85年から全日本選手権8連覇し、88年カルガリー五輪5位。89年に世界選手権で日本人初優勝。92年アルベールビル五輪で女子の五輪史上初めてトリプルアクセルを決め銀メダル。同年引退。04年3月、日本人初の世界フィギュアスケート殿堂入り。身長145センチ、血液型B型。