20年東京オリンピック(五輪)で実施されるスポーツクライミング複合の予選で、男子の楢崎智亜(ともあ、22)が2種目目のボルダリングでトップに立った。4つの課題(コース)を全て登りきり、前日23日のスピードと合わせて総合首位。

楢崎の勢いは本物だ。最初の課題では横一列に並んだ男女8選手の名前、国名が順番に読み上げられる間に、1度目の試技で完登する「一撃」。アナウンスが終わる頃には待機場所へと戻り、姿がないほどだった。最初の3課題を一撃し、最後の課題は4回目で完登した。4課題全てを完登したのは23人中3人。その中で最もトライ数が少なかった男は「得意な課題が多かった」と穏やかに笑った。

前日23日には“弱点”であるスピードの単独種目で予選通過。決勝は10位だったが、自身の日本記録を更新し「スピードの予選、決勝ときて、体がつながってきた」と状態は右肩上がりだ。頂点を狙う複合は、前日のスピードとこの日のボルダリングを合わせて総合首位。上位6人の決勝進出に大きく前進し「リードも落ち着いてやればいける」と不安な様子は一切ない。

18日まではドイツで行われたボルダリングのワールドカップ最終戦に出場。直後にインドネシア入りしたため、「今のところは何もできていない」と、大会を満喫できてはいない。それでも選手村では「他のアスリートはどんなトレーニングをしているのかな?」と自然にチェックの目が動く。「この後も世界選手権(9月)がある。ここで崩せない」。地に足を着け、まずはアジアに名を刻む。【松本航】

◆複合の順位決定方式 スピード、ボルダリング、リードの各種目の順位をかけ算し、総合点を算出。点数の少ない順に複合の順位をつける。例えば、スピード5位、ボルダリング1位、リード3位ならば「5×1×3」で15点。同点で並んだ場合は、直接対決で勝っている回数が多い選手が上位となる。東京五輪でも同様の形式で行われる。

◆複合とは 20年東京五輪で行われる方式で「スピード」「ボルダリング」「リード」の3種目で争う。スピードは高さ15メートルの壁を登るタイムを競う。ボルダリングは高さ3~5メートルの壁にさまざまな形のホールド(突起物)が設置され、複数の課題(コース)に挑んで制限時間内の完登数を争う。壁の高さ12メートル以上のリードは、制限時間内での到達高度が記録となる。