過去8大会で6度の総合優勝に導いた青山学院大の原晋監督は「人生いろいろ、箱根もいろいろ。いろんなことが起こりますよ」と、ほろ苦い表情を浮かべた。

「“ピース大作戦”は山登りと山下りの2つのピースがハマりませんでした」。恒例となった作戦名には「ピースサインでゴールしてほしい」と願い、“ピース大作戦”を掲げた。駒大の3冠阻止に挑んだが、知り尽くしていたはずの箱根の怖さを思い知らされた。

元日の朝。初日の出に照らされて練習を見守っていると、5区出走予定の若林宏樹(2年)から切り出された。「体調が良くないんです」。前回同区間3位の実力者に起きた非常事態。6区に起用予定だった補欠登録の脇田へ「準備しておくように」と告げた。

暗雲が垂れこめた往路は、1日前倒しで山登りに臨んだ脇田が区間9位と踏ん張った。首位駒大との差は2分3秒。指揮官は「可能性はゼロではない」と強調したが、復路で不安は的中した。元々は山下りの3番手だった西川が区間最下位と大ブレーキ。首位との差は7分4秒に開き、優勝争いから脱落した。

前兆は日々の練習から感じていた。激しい競争に勝ち抜くため、本番ではなく、部内選考会にピークをあわせる選手が目立ち始めた。「他の大学と戦うのが自分たちがやることだぞ」。選手もうなずいてはいたが、本当の意味では伝わっていなかった。

大手町のゴール地点。アンカーを迎える前から、西川のおえつが響いていた。4年生の涙を無駄にはできない。原監督はあらためて誓った。「自律したチームを作らないといけない」。言葉に熱がこもる。「もはや青山学院大は3位で喜べるチームではない。この結果を真摯(しんし)に受け止め、リベンジしたい」。足りないピースを求め、再出発を切る。【藤塚大輔】