<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇22日◇埼玉・熊谷スポーツ公園陸上競技場

 男子100メートルは川面聡大(24=ミズノ)が10秒24と、自己記録に0・02秒と迫る好タイムで優勝。この種目のロンドン五輪代表だった江里口匡史(24=大阪ガス)、モスクワ世界陸上4×100メートルリレー6位入賞の2走だった藤光謙司(27=ゼンリン)らを後半で引き離した。

 2年前のテグ世界陸上でリレーの補欠だった川面は、昨年のロンドン五輪代表を逃したことを契機に独自のウエートトレーニングを導入。体幹強化をいっそう重視し始めた。今年の日本選手権も5位でモスクワ世界陸上代表から漏れたが、秋になって新しいトレーニングの成果が現れ始めた。

 「体幹がぶれなくなり、1歩1歩を力強く踏めるようになりました」。苦手だったスタートから加速段階で遅れなくなり、得意の後半につなげられるようになった。「今日は60メートルでトップだったので、あとはリラックスだけを意識しました」

 昨年は大手電子機器メーカーの内定を1年間保留してもらい、ミズノ所属で五輪出場を果たそうとした。日本選手権も予選落ちする不調だったが、大きなケガがあったわけではない。

 「どこかに、陸上がだめでもそっちに行けばいい、という甘えがあったのだと思います。実際悩みましたし、親からは将来を考えるように言われましたが、人生を懸けて陸上競技をやりたいと決断しました」

 覚悟を決めたことで、練習を含めて競技に取り組む姿勢が変わった。

 ずっと勝てなかった江里口に今大会で勝つことができたが、山縣亮太(21=慶大)と桐生祥秀(17=洛南高)には水を開けられている。次戦は10月上旬の東京国体だが、山縣は東アジア大会出場、桐生は国体少年カテゴリーへの出場のため直接対決はできない。狙うのはタイムである。

 「やっと土台ができてきたので国体で10秒1台の自己新を出せれば、来年、山縣たちと勝負ができます。その先に10秒0台、9秒台という記録がある」

 そして川面は東京出身。両親の不安を、実際の走りを見せることで吹き飛ばしたい。